Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<21>
 
 レオン
 

 

 

 

 

「ねぇ、それで、レオン?」

 食後の茶を振る舞っているときに、唐突にジェネシスが訊ねてきた。

「それで……とは?」

「だって、君もリクも昨日から、ずっと話したいことがあるはずだろう? 君はあまり表情に変化がないけれど、あの美少年は相当追い詰められているような雰囲気だったよ」

「…………」

「なんだ、何かあんのか? 例の黒コートのことか?」

 遠慮無くお代わりの分をたいらげながら、セフィロスが言った。ちなみにクラウドはようやく目を擦りながら、バスルームに行ったところだ。

「……ああ、だが……」

「男ならはっきり言え。まだるっこしい」

 セフィロスは面倒くさそうにそう告げた。かたわらのジェネシスが、ヤレヤレといった様子でため息を吐く。

 

「……もちろん、話すべきだし、話したいとは思っていた」

「でも、たまたまやってきた俺たちに、すべてを打ち明けて助力を要請するのは、さすがに都合が良すぎると……まあ、遠慮してくれているのかな、レオン」

「ジェネシス……」

「せっかく友人になれたのに、君は生真面目な人だね。大丈夫、ケンカっ早さなら、こいつの右に出るものなんてないんだから。君が話をしてくれようとそうでなかろうと、黒コートを見たら、勝手に襲いかかっていくと思うよ」

「うっせェ! テメーは黙ってろ、ジェネシス!」

「ハイハイ。ってことで、遠慮無く言ってもらえるかな」

 ジェネシスが、にっこりと微笑んでそう告げてきた。

 もともと、線の通った美しい顔立ちが、匂うように艶やかに際だつ。どうやら、セフィロスだけでなく、彼自身もこの世界の出来事に関心を抱いているようだ。だが、それをあからさまにすると、深刻な状況である俺たちに対して、反感を抱かせる可能性もあることを十分配慮しているようだった。

 

 

 

 

 

 

「……この世界には賢者アンセムという人物が居てな……」

 ところどころは、自身の目で確かめたわけでなく、リクからの報告によるものだが、かいつまんで説明を続けた。

「13機関というのはいわゆるノーバディなんだ。彼らがおのおの独自の目的をもっているのか否かはわからない。だが機関はゼムナスというリーダーのもとで、人の心を使って『人心によるキングダムハーツ』を作ろうとしているらしい」

「なんというか……ずいぶんと複雑な話だね。それに情報がそれだけしかないとなると……」

 至極もっともなことをジェネシスが言った。

 俺たちにはまだまだわからないことばかりなのだ。人の心を吸い尽くし、キングダムハーツとやらを完成させたとしたら、いったい何が起こるのだろうか。ソラのもつキーブレードが、この場にない今、ゼムナスの凶行を止める方法があるのか…… 

「ええと、ハートレスというのが別称「心なきもの」だったよね」

「ああ、「心を失った者達」だ。正確に述べるならば「自らの心の闇に打ち敗れた心のみの存在」で、これは影のような存在で、どこにでもあらわれる」

「ノーバディはその中でも、強い意志力を持つモノらで、13機関は、すべてはもと人間で、今はノーバディとなっている……でいいのかな」

「そのとおりだ。アンタは飲み込みが早くて助かる、ジェネシス」

 おそらく異世界から来た彼らにとっては、まるきり不思議の国のお話に聞こえるだろう。

 そもそも、ハートレスやノーバディなどと言っても、ひとことで理解できる代物ではない。

「それで? 頼みごととはなんだ。オレ様に、そいつらの頭領をぶっ殺してこいっていう話か?」

 あまりにもあっさりとセフィロスが言った。それ以外にないだろうというように。

「待て、セフィロス。いくらアンタでも、勝手のわからないこの世界で、いきなりそんなことは無理だ。危険きわまりない。それに……そもそも、ゼムナスの居所さえわからない。ホロウバスティオンに居るのか、それとも彼らは自由に時空を行き来しているのかもしれない」

 両の手を組み合わせ、額に当てる。

 今、自衛団で現実的にできるのは、可能な限り、ホロウバスティオンの街から、ハートレスの大群を駆除し、ノーバディを消滅させることだけなのだ。