Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<41>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「『サイクス』な。なるほど、頭領ゼムナスの右腕か。赤毛やチャラ男とは少々纏う空気が違うからな」

 オレがそう言うと、リクが整った顔を崩して、小さく笑った。

「セフィロスの人物形容は言い得て妙だ。アクセルとデミックスのふたりのことだな」

「ああ、そんな名前か」

「……そうだな、サイクスは機関員の中でも特別だ」

 リクが頷き返す。

「チッ!ったくあのボケ老人が……! むざむざ連れ去られやがって! いったい何を考えてやがる!」

「『ボケ……老人?』」

 と、今度は誰のことかわからなかったらしく、リクが聞き返してきた。オレが答える前に、ジェネシスがいかにもヤレヤレといった様子で言葉を引き取った。

「『死の大天使』どののことだよ。まったく、同じ顔だっていうのに、ウチのセフィロスは言葉が悪くてね」

「そのまんまだろ。あの野郎、人と同じツラをしていやがるくせに、いつもいつも、ボケーっとしてやがって!ったく手間ばかり掛けやがる!」

 

「とにかくだ……! 『セフィロス』を取り戻しにいくことに異存はないんだろう? 13機関の本拠地が、ホロウバスティオンのアンセムの城ではなく、やはり『存在しなかった世界』なのだとわかったのだから……」

 今にも腰を上げそうな勢いでレオンが叫んだ。

 うさんくさそうなオレのまなざしを完全に黙殺してだ。

 

「レオン……ソラが間に合わない……」

 苦しげにそう言ったのは、リクであった。

「ゼアノートのノーバディ……ゼムナスを完全に消滅させるためには、キーブレードが必要だ」

「なるほど、ここで光の戦士の名前が出てくるわけだね。キーブレードか」

 と、ジェネシス。

 

 

 

 

 

 

「その、『ソラ』とかゆーのは、どこにいるんだ。連れてこられないのか」

「眠ったままなんだ……まだ、目覚めのときがこない。こればかりは……どうしようもないんだ」

 リクが唇を噛んだ。

「ちょっと待て、だが、おまえもキーブレードを使えるんだろう、リク」

「……俺のキーブレードはもともと闇の力から生まれたものだから…… ソラのもののように、天性の光が具わっているわけでは……」

「だが、今の君は明るい側にいるじゃないか。世界を闇に染めないために戦っているのだろう? 立派なキーブレードの戦士だと思うけどねぇ」

 のんびりとした口調でジェネシスが言う。それについては、オレも同感だった。

「おまえは自分の力を過小評価しすぎだ。過去になにがあったか知らねーが、今の力でできることをするしかねーだろ」

「セフィロス……ジェネシス……」

 リクがオレたちの顔を交互に見つめた。

「……ゼアノートを消滅させることはできなくとも……キングダムハーツを……人の心を集める機械を破壊することならば……」

「それで上等だろ。もともとこの街の連中の心を取り戻すのが、レオンら自警団の目的でもあるのだろうし、その機械とやらをぶっ壊すことで、この世界のあらゆるところから『心』集めるのを阻止できる」

「そのとおりだ! 何が何でも『忘却の城』の機器を破壊し、そして『セフィロス』を救い出すんだ!」

 力強くレオンが言った。どうにもこいつはちょっとずれている。

 もっとも、『忘却の城』とやらに、行かないわけにはいかない。それだけは確かなことでありそうだった。