セフィロス様の生涯で最悪な日々
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 セフィロス
 

  

「セフィってさ、フェミニストではないよな〜。なんかこう……冷ややかっていうかさ」

 クラウドのガキが、わりと真面目な顔をして、オレに向かってそう告げた。

「あははは、唐突だなぁ、チョコボっ子」

 ジェネシスのヤツがさもおかしそうに笑う。

 今は土曜の午後、昼食を終えての昼下がりだ。もちろん、ジェネシスは手みやげをもって、遊びに来ているというわけである。最近の土曜はこんな日が多い。

 ガキどもは海に出掛け、仕事のないクラウドがのんびり朝寝をして、ちょうど起き出してきたころに、ジェネシスが遊びに来るという……

 オレにとっては、誰が来ようが出掛けようがどうでもいいことなので、気にならないが、定番のような土曜の午後だ。

 もっとも、今日はこの後、ジェネシスと晩飯に出掛ける予定になっているのだ。

 なぜなら、空間のよじれについて、くわしく話をしてくれるということだからである。この手の話題は、うちではやりにくいし、ふたりで飲み屋ででもしたほうがはかどるというものだ。

 

「ところで、おまえはちゃんと『フェミニスト』の意味を理解して言っているのかい?」

 オレが訊ねたいことを、代わりにジェネシスが聞いた。

「えー、まぁ、難しいコトはともかく、あんまし、女の人にやさしくないってこと!」

 と、やはり見当外れのことをクラウドが言う。

「なんだ、それは。別に男も女も差別してねぇぞ」

 ジェネシスの手みやげの洋菓子を食いながら、オレはクラウドに言い返した。

「ああ、だからじゃない。普通の成人男性は、同性よりも、異性にやさしいもの。こう、いたわりの感覚で接するというか」

 反対側の席に着いたイロケムシが、さも得たりとばかりに発言した。

「テメェ、オレは普通の成人男性じゃないというのか」

「まぁ、フツーじゃないのはそのとおりなんじゃないのォ。あ、お茶のおかわりは?」

 そう言って、殴られる前に、軽やかにキッチンに姿を消した。

 

「だいたい、なんでいきなりそんな話になるんだ」

 オレはクラウドに訊ね返す。

「んー、なんとなく、神羅にいたころのこと思い出してたら、気がついたんだよね」

「し、神羅にいた頃……? なにかあったのか、クラウド」

「ヴィンセント、関心を示すな!どうせ、ガキのたわごとだ」

「え、で、でも……側近くにいたクラウドがいうのだから、なにか理由が……」

「別に理由なんざない。ただ、女は面倒くさいと思わせられることが多かった」

 フンと吐き捨てるようにそういうと、クラウドが『ああ、そう!』というように顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

「そうだ、そうそう。セフィって、社員の女の人相手に話すとき、面倒くさそうなんだよね。すごくぶっきらぼうに物を言うじゃん!」

「そ、そうなのか……?」

 と、ヴィンセントが目を見開く。

「……は?別にそんなつもりはないぞ」

「ううん、だとしたら自分で気付いていないだけ。セフィってば、玄人の女の人相手には愛想がいいくせに、ふつうの……っていうか、社員さんとか、そういう女の人には素っ気ないんだよね。オレ、側にいて、『もっとやさしく話せばいいのに』って何度か思ったよ」

「フ……ン。まぁ、社員相手ってこたァ、仕事の話だろうからな。クソおもしろくもない話題だから、無愛想に聞こえたんだろうよ」

「な、なるほど……」

 いちいちヴィンセントが興味深そうに頷く。どうも、『神羅時代のオレ』というのは、こいつにとってかなり関心の対象らしいのだ。

「ああ、チョコボっ子。案外よく見ていたんだな。確かにセフィロスはいわゆる花柳界の女性以外には、思いの外愛想がなかったし、クールだったんだよ。そう、やはり『面倒くさい』という雰囲気で対応していたことが多かったかな」

 こんなふうにジェネシスにまで言われてしまっては、どうやら認めざるを得ないようだ。ジェネシスにしても、クラウドにしても、当時、もっともオレの側近くにいたふたりだったからだ。

「女は……確かに面倒くさい。スカーレットだのタークスの女なんか見てるとな。すぐにヒステリーを起こしたりするだろ。後、女はすぐに落ち込んだり泣いたりする。水商売の女はともかく、仕事ではあまり関わり合いになりたくなかった」

「そ、そうか……落ち込まれたり、泣いたり……」

 ヴィンセントが妙に暗い口調でいうので、

「言っておくが、おまえはヒステリーは起こさないだろ。落ち込んだり泣いたりは、もう見慣れたから気にするな」

 とフォローを入れておくことにする。

「どうも感情で動く輩は苦手だ。特に女のヒステリーはうんざりする」

「まぁ、確かに身近に兵器部門長なんかを見ているとね。あまり面倒事には関わり合いになりたくないと思っちゃうよね」

「そのとおりだ。ま、オレの態度が素っ気ないとしたら、そのあたりが理由だろうよ。さてと、ジェネシス、そろそろ出掛けるぞ」

 大分、陽が落ちてきたのを見計らって、オレはジェネシスに声を掛けた。