テンペスト
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<7>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

「ああ……!こんなことになるなんて……ッ!」

 イロケムシが、テーブルを叩く。

 昨夜もほとんど眠っていないのだろう。色白の頬には、くっきりとクマが浮かんでいた。

「落ち着け。ただの身代金目的の物取りのしわざかもしれん」

「でも……そんなこと……」

「情報は神羅が全力を尽くして、調べているだろう。時期に手がかりがつかめるはずだ」

「だって……こうしている間にも、カダの身に何かあったら……」

「ヤズー、昨日から、ほとんど何も口にしていないではないか。そんなことではいざというときに、あの子を助け出しに動けないぞ」

 ヴィンセントが言う。

 昼食の支度は出来ているのに、神羅からの電話を受けた後のせいか、なかなか食事を始める雰囲気になっていない。

「おい、おまえら、さっさと座れ。すぐに神羅から迎えのヘリが来る。今のうちに腹ごしらえをしておけ」

 オレがそう言うと、皆一様に席に着く。

 腹が減っていないわけではないのだ。

「そうだよな、セフィの言うとおりだ。大丈夫だよ、ヤズー。あれでカダはけっこう強いじゃん」

「兄さん……」

「俺たちはしっかり食って、出掛ける準備しておこう!いただきます!」

 クラウドが率先して、フォークを手にした。

 がつがつと勢いよく、出された飯を食い出す。

「さぁ、ヤズーも。温かなお茶もあるからな」

 そう言って、ヴィンセントがヤズーの前に、ハーブティーを差し出した。

「うん……そうだね。食べるよ……」

「カダージュはきっと大丈夫だ」

 そう言って、ヴィンセントは自らもスープをすくって食べ出した。食事のトロいこいつが、一生懸命食べる様には、勇気づけられるのだろう。

 ヤズーもすすめられるままにスプーンを手にする。

 

 結局、オレたちは、レノたちが迎えに来るまでの小一時間、しっかりと飯を食って待っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「こんなことになって、なんと言ったらいいのか……迷うぞ、と」

「なら、別に何も言わんでいい。それより、何かつかめたのか?」

 あれから、きっかり二時間後にやってきた神羅のヘリに、レノが乗っていた。

「アンタは相変わらずだな、と。彼らがいなくなった現場の周辺に案内するぞ、と。化学技術研究所……バイオテクノロジーを専門に研究している施設だ」

 大きなヘリコプターに揺られながら、オレはレノの話を聞く。

 後部座席には、ヴィンセントとヤズーが座っている。もう一機にはクラウドらが乗っている。

「なるほど、生物工学ね…… 確か、そこは連中の見学コースに入っていたな」

「ああ、見学中は特に何も無かったと聞いている。その後、場所の移動をするとき、一部のグループがいなくなったのに、気付かなかったらしい。それが……」

「なるほど、カダージュたちのグループだったってわけか。確か装甲車で移動させられたのを見た人間がいるという話しだったが……」

「ああ、だが、同じ子どもだし、遠目だったから、あまり当てにはならないかもしれないぞ、と」

「……本当だとしたら、わざわざ装甲車なんて使うというところがな。むしろ引っかかるが」

「目立ちすぎだっていうんだろ。俺もそう思うぞ、と」

「まぁ、移動手段で車を使うというのは、十分考えられるが。だが、どこへ連れていったのか……わざわざ人の多いミッドガルで誘拐したんだ。むしろ、周辺に潜んでいる可能性は高いんじゃないか?」

「じゃ、じゃあ、セフィロスはカダたちが、まだミッドガルのどこかにいるというの?」

 そう声を掛けてきたのは、後ろ座席に座っていたヤズーだった。

「おまえは、ヴィンセントの膝枕で寝てろ、半病人」

「俺は何ともないよ!それよりさっきの話……誘拐犯のアジトはミッドガルに?」

 急き込んで訊ねてくる。

「……さぁな。その可能性もあるって話だ。例えば、装甲車かなんかで連れ出したとしても、方向感覚がわからなくなるように、わざとぐるぐると長い時間走り回ってから、ヤサに潜り込んだとも考えられるだろ」

「身代金目的の誘拐という線は消えたの?レノ」

 今度はレノに訊ねる。

「まだ、犯人の側からは何の連絡もないぞ、と」

 すまなそうにレノはため息を吐いた。