テンペスト
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 セフィロス
 

 

  

 バラバラとホバリングの音を立て、ヘリが研究所の屋上に降り立った。

「ここが化学技術研究所だぞ、と。しばらく閉館にしているから、遠慮無く中に入ってくれよ、と」

「よし、おい、行くぞ」

 後のヘリから下りてきたクラウドらに声を掛け、オレたちはひとまず研究所のミーティングルームに落ち着いた。

 どれくらい滞在することになるのか見当がつかなかったから、身の回りのものを持ち出してきたのだ。

「最上階は貴賓室になっているからな。部屋、適当に使ってくれ」

「ここ、神羅本社と近いんだね。本社の化学部門が入っているの?」

 わりと落ち着いた口調でヤズーが訊ねた。

「本社の化学部門と、外部からのパートナーが一緒に研究できるようになっている。優秀な化学者を育てる目的もある」

 ぼそぼそとルードが答えた。こいつは相変わらず無口な大男だ。

 

「おい、荷物を置いたら、例の装甲車が走り去ったという現場に行くぞ」

「うん、急いで案内して、レノ。大丈夫、ヴィンセント、疲れてない?」

 ヤズーがはやる気持ちを抑えつつ、ヴィンセントに声を掛けた。

「問題ない。早く行こう」

 オレたちは人気のない建物の中を、エレベーターで降っていった。

「なぁ、レノ。ここって、オレたちが前に来たときは、まだ廃墟だったよな?」

 オレも気付いていたことだが、クラウドが訊ねた。

「例のDGソルジャーの件のときか? この周辺には徐々に手は入れていたんだがな。西区画は廃墟が多かったぞ、と」

 さすが、腐っても神羅カンパニーというところか。

 数ヶ月前までは、鉄材や石ころの散らばっていた場所に、こんな巨大な研究施設を建ててしまうのだから。

 

 

 

 

 

 

「こっちが出口だぞ、と。ああ、今日はセキュリティ解除してあるから、そのまま手動扉から出られる」

 レノとルードに続いて、広いエントランスを通り抜け、建物から出た。目の前はちょっとした広場になっており、その脇は機能的に、駐車場になっている。

「駐車場の向こうはどうなっているんだ」

「ああ、そのまま地下の倉庫に繋がってる。車で乗り込めるようになっているんだぞ、と」

「それで、装甲車が走り去ったというのは……」

 ヴィンセントがすべて言う前に、レノが身振りを交えて説明した。

「地下から、駐車場を走り抜けて、そのまま北口へ出て行ったらしい。もっとも『地下から』というのは、はっきり見たわけではなくて、そんなふうに見えたという程度の話だぞ、と」

「なんとも信憑性のない話だな。……北口から出て行ったとして、ルートの割り出しようはないか。それこそ、ここから北方方面は、まだまだがれきの山が積んであったと思うが」

 オレの言葉にレノは頷いた。

「西区北面は、まだ手つかずの場所が多いな。列車墓場なんかもそのままだぞ、と」

「それなら、車で入っていくのは難しいんじゃないの。道らしい道がないってことだろ?」

 クラウドも同じように考えたのだろう。そんなふうに言葉を重ねた。

「装甲車だからな。ある程度は耐えられるだろうが……何とも言えないぞ、と」

「もちろん、神羅のほうで探索してるんでしょ?そっちの状況はどうなのよ?」

 ヤズーが、急き込む気持ちを抑えて訊ねた。

「今のところ、はかばかしくはないな。装甲車だから目立つと思ったんだが、なかなか見つからない」

 ルードが低く答える。

「もう、しっかりしてよ、赤毛くん!」

「な、なんで、俺なんだよ、と!」

 胸ぐらを締め上げるヤズーに、レノが文句を言った……そのときだった。

 レノの携帯が、騒々しい音を立てた。