テンペスト
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<10>
 
 セフィロス
 

 

  

 

「はい、こちらレノだぞ、と!」

 ようやくヤズーの手から逃れて、赤毛が応える。

 

「……そうか!わかった。すぐにそっちに向かうぞ、と!」

「どうしたの? 何かわかったの?」

 ヤズーの言葉に、レノが頷く。

「イリーナからだった。乗り捨てられた装甲車が見つかったぞ、と。それから、その付近にいた怪しい男を確保したらしいぞ、と」

「よっしゃぁッ!」

 クラウドが声を上げる。

「それじゃ、早く現場に行こうよ!どこなの?」

 ヤズーが急かした。

「西区北部の廃墟らしい。もともとの生命科学研究所があった場所だな」

「もとの……生命科学研究所?本社の出先機関のか」

 オレの言葉にレノとルードが同時に頷いた。

「例のホランダーの居た研究所だぞ、と。ぞっとしないな」

「何の話?ホランダーっていうのは?俺が神羅に居た頃、聞いたような聞かないような……」

 クラウドが言う。

「ああ、おまえは耳にしたことがあったかどうかわからないが……神羅の研究者だ。宝条との覇権争いに敗れた男なんだが……まぁ、今はその話はいい。レノ、さっさと車を回せ」

「わかっているぞ、と!」

 オレたちは車に乗り込み、一路、もと生命科学研究所があった場所へ急ぐ。

 がれきに覆われた道を行くので、何度か迂回しなければならない。

 その間に、クラウドが真面目な顔をして質問してきた。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、セフィ。さっきの話……ホランダーって科学者のことなんだけどさ。例のDGソルジャーを生み出した男……だったよね」

「ああ、そうだ」

「それじゃ、その……生命科学研究所で、その実験をしていたの?」

「おそらくはな。Gプロジェクトを考案した……唾棄すべき最低な科学者だ」

 きっと口調がきつくなったからだろう。クラウドがオレの顔を盗み見る。こんな話をしているのは、ヴィンセントとは別の車に乗っているからだ。

「ジェネシスも……その被害者なんだよね」

「そうだ。ヤツは何も知らなかった。……あいつがしようとしたことはともかく……神羅の科学者に弄ばれた被害者だ」

「でも、ジェネシス……劣化しないでいるよね。どうしてなんだろう?」

「直接聞こうかと思ったが……まだ訊いていないな」

「そ、そうだよね。話したくないことだってあるよね。……装甲車が見つかった場所が、もと生命科学研究所だっていうのが気になってさ。ヴィンセントの居る前じゃ言えなかったんだけど……なんだか嫌な予感がして……」

 クラウドにしてはよくよく考えてのことだろう。オレも口には出さなかったが、例の研究所の跡地に、なんらかの関わりがあるのではないかと見ている。

 身代金目的の誘拐犯ならば、電波もまともに通っていない、がれきの山に連れ去る必要はないし、とても物取りの犯行とは思えない。

「……オレも同感だ。だが、まだヴィンセントには言うな。事の次第がはっきりするまではな」

「もちろん、そのつもりだよ。……でもさ、もし、本当にDGソルジャーが関係しているとしてだよ。ええと、ツヴィエートのネロとヴァイスだったっけ。もし、また連中が動いているんだとしたら、なんでヴィンセントでなく、カダをさらったんだろう」

「……わからん。今はまだ何もわからない。憶測だけで物事を見ると判断がにぶる可能性がある」

「う、うん、ごめん。そうだよね」

「だが……万一のために予測をしておくのは悪いことではない」

「うん……」

「……チビガキは大丈夫だ。何かあれば、思念体のもとであるオレや、血を分けた兄弟たちが察知する。今はまだ何も感じない」

「そっか……セフィがそう言うなら、ちょっと安心かな」

 オレとクラウドとの会話を運転席のレノは耳にしているはずだが、何も口を挟んではこなかった。