テンペスト
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<18>
 
 セフィロス
 

 

  

 

 

 

 オレたちを乗せたジープは、目的の場所まで着いた。

「おい、ここなんだろうな。確かか?」

 オレは同行させた男の首を引っ張り、そう訊ねた。歯が抜けてしまった男は、ふがふがと聞き苦しい音を立てて肯定した。

「見たところ……何もないようだが……」

 ヴィンセントとクラウドが先に降りて、周囲を見回す。

「忘らるる都か……なんだか懐かしいな」

 クラウドがつぶやいた。

「……俺は嫌な気分だよ。なんだかいろいろなものを持っていかれそうな……」

 普段は無口なロッズが低くつぶやいた。寒いわけではなかろうが、ぶるると身震いする。

「おい、おまえら。こんな場所でしみじみしている場合じゃないだろ。早いところ末のガキを見つけなければ、いつまで経っても帰れんぞ」

「……貴様、ここで偽りはないんだろうな。見たところ、どこにもそれらしき建物などはないぞ」

 ヤズーが男の腕を引っ張り上げて、強くひねった。

「ぎゃあぁぁ!知らねぇ!これ以上はわからねぇんだ!いつもこの場所に車を着けると、地下室への扉が開いて……」

「それはどこなんだ!」

 さらに強くヤズーがひねり上げた。

「はっきりとはわからねぇんだ!いつも、つ、土がこうやって盛り上がって……地下への階段が出てくるんだ……!ひぃぃ!もうやめてくれ!」

 これ以上有益な情報は聞き出せないと踏んだのだろう。ヤズーは男をうち捨てると、車から降りた。

「どうやら地下室があるらしいんだよ。この土の下に、地下へ続く階段が出てくるんだって」

「ちっ……厄介だな。この下か。土を暴かねばわからねぇぞ」

 オレの言葉に、クラウドとロッズがしゃがみこんだ。

「文句言ってても仕方ないだろ、セフィ。入り口さえ、見つかれば、なんとかしてそこをこじ開けて……」

「うん、そうだね、兄さん。俺、あっちを見てくるよ」

「この場所の近くであるのは間違いないようだから……急ごう」

 ヴィンセントまで一緒になって、地面に這い蹲る。

 

 

 

 

 

 

 必死に探して十五分も経ったころだろうか。

 ヤズーが大声で、オレたちを呼んだ。

「ねぇ、見て!ここだけ土が新しくなってる。地下への階段ってここなんじゃない?」

 よくよく眺めてみれば、縦に細い筋が通っている。おそらくこの場所は、地下からのリモートコントロールで、持ち上がるようになっているのだろう。

「どうする?あの男もコントローラーなんて持っていなかったよ」

 クラウドが足で土を暴きながら、そう言った。

「……こうなりゃ力尽くだ。ダイナマイトで入り口を爆破する」

「ああ、赤毛くんが持たせてくれたのがあったよね。まさかこんなところで使うことになるとはね」

 オレの言葉にヤズーがそう返した。

「ダ、ダイナマイト……? だ、だが、相手に気づかれてしまうのではなかろうか。そのようなもので、入り口を爆破しては……」

 ヴィンセントが不安げに言うが、ここはもはや強行突破しかないだろう。

「いや、時間が惜しい。いずれにせよ、入り口は力尽くで開けるしかないんだ。クラウド、ダイナマイトを持ってこい。ジープに積んであるはずだ」

「わかった」

 すぐにクラウドは、爆弾を持って戻ってきた。レノが持たせてくれた強力なヤツだ。

「オレがセットする。おまえらは少し離れていろ」

「わかったよ。さ、ヴィンセント、兄さん、行こう」

 ヤズーが首尾良く皆を車の影に避けさせた。

 

「耳を塞げよ」

 オレは時限爆弾をセットし、すぐに退避する。

 一刻後、その場所には鉄くずが積もっていた。

 ヤズーとロッズがすぐその場に駆けつけ、鉄の扉を力尽くで持ち上げた。そのまま、入り口から引き離し、邪魔にならぬ場所に放り投げる。

「セフィロス、入り口開いたよ!」

「ああ、おまえ最初に入れ。オレはしんがりだ」

 ヤズーにそう言うと、彼はすぐに階段を降り始めた。

「クラウド、後に続け。ヴィンセントはオレの前を歩け。ロッズ、おまえはこの場所で待機だ。誰も通すな。……神羅の連中が来てもだ。かえって足手まといになる」

 てきぱきと指示を出すと、連中はそれに従って、すぐに動き出した。

 

 ……おそらく、オレたちが入り口を破壊して、地下に降りているという事実は、敵にも伝わっているだろう。

「おい、もう敵陣だぞ。注意は怠るな」

 オレは背後から皆に声を掛けた。