トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<1>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 その大揺れが、コスタ・デル・ソルを襲ったのは、クラウドを仕事に送り出した直後のことであった。

 不気味な横揺れが、時を置かずに大きな縦揺れに転じたときには、すでに立っていられなかった。

 

「きゃあぁ!ヤズー!」

「カダ、テーブルの下に入るんだ。頭を低くして動くな!」

 ヤズーが末っ子のカダージュをかばいながら、食卓の下に潜り込む。作り付けの食器棚のガラスが割れ、雨のように砕け散った。

 私も立っていられなくなり、なんとか居間のテーブル下へ移動しようと這いずるのだが、やむことのない激しい揺れに身動きがとれなくなった。

 ずんと、ひときわ強い揺れを感じたとき、私の身体はセフィロスの身の下に抱き込まれていた。

 棚の上の飾り壷が、彼の大きな背中を直撃した。

 グワシャと重い音を立てて、砕け散る。

「ぐっ……」

「セフィロス!セフィロス……!大丈夫か?私をかばったりなど……」

 慌てて身を起こす私を、彼が強い力で引き倒した。

「まだ動くな……!揺れがおさまってからだ」

「で、でも……」

「オレは大丈夫だ」

 低くそうつぶやくと、セフィロスはそのまま私を懐に抱えた姿勢で振動が止むのを待つのだった。

 

 ズズズ……ズン……

 

 縦揺れがおさまり、鈍い音を立てて、ふたたび横揺れに変る。

 

 

 

 

 

 

「おさまった?おさまったよね?」

 カダージュがヤズーの腕の中から頭だけ出す。

「カダ、そこら中にガラスの破片が散っている。危ないからまだ出るんじゃない」

「大丈夫だよ。早く家の中片づけないと」

 そう言ってカダージュが、ようやくテーブルの中から這い出してきた。

「セフィロス……セフィロス、もう落ち着いたようだ。早く君の手当をしなければ……!」

「……チッ、大丈夫だと言っているだろう。ちょっと背中を打っただけだ」

 素っ気なく彼はそう言ったが、あの大きさの壷を無防備な背で受けたのだ。痛まないはずがない。

「そんなことを言って……!君は自分の身体のこととなると、すぐに無茶を……」

 ようやくセフィロスが、私の身体を解放してくれた。急いで救急箱を取りに行こうとする私を、腕を引っ張って制止した。

「おら、ガラスの破片がすごいって言ってんだろ。むやみに歩こうとするな」

「わ、わかっている、大丈夫だから」

「まずはそこら辺を片付けてからだな。おい、イロケムシ、おまえも怪我はないんだろ。さっさと食器棚を元に戻すぞ」

 そう言って、セフィロスは力強く立ち上がった。背中が痛くないはずはないのに、いつもとまるきり変らない態度でだ。

「わかってるよ。あーあ、食器棚のお皿は全滅かなぁ、お気に入りのものも入っていたのに~」

「仕方ねぇだろ。おいそっち持て」

 そういうと、セフィロスとヤズーのふたりで、巨大な食器棚を軽々と持ち上げてしまった。そのまま、元あった場所に戻す。

「おい、チビ。テレビを点けてみろ。相当デカイ地震だったんだ。ニュースでやってんだろ」

 チビといわれて、いつもは怒り出すのに、カダージュ自身も地震のことが気になっているのだろう。器用に破片をよけ、セフィロスに言われたとおり、テレビのリモコンを手に取った。