トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<3>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 私たちは話をすることもなく、早足でジェネシスの後に続いた。

 家から出て、見慣れた海岸線へと歩みを進める。

 

 しかし、その場所は我々のよく知っている海ではなかった。

 海岸線の一部が歪み、ここではない世界と繋がっている。そう……私がここ数日で見慣れた風景……水晶の谷とアンセムの城のある世界。

 いわずもがなホロウバスティオンの街だったのである。

 

「レオンと兄さんがいる!」

 とカダージュが叫んだ。

「レオン……『クラウド』、それに『セフィロス』……!」

 私たちはすでに馴染みとなった彼らの名を口にした。

 だが様子がおかしいのは、こちらの世界の私たちだけではない。三つ巴になって突っ立っている彼らの間には尋常ではない空気が流れている。

 ……まるで、ホロウバスティオンでの別れの間際、そのままだ。

 

「ヴィ……ヴィンセントさん、それにみんな……どうなっているんだ、これは」

 気を取り直したのか、レオンが我々を見て、信じがたいように頭を振った。

「コスタ・デル・ソルで大きな地震があったんだよ。あまりにおかしな揺れ方だったから、こうしてみんなで見に来たというわけ」

 ジェネシスが如才なく答える。

「あの強い衝撃は、世界が一時的につながったからなのか」

 私たちのほうのセフィロスが、慎重にそう言った。

「地震……?そんなもの、こちらの世界では起こらなかったが」

 同じ顔をした、ホロウバスティオンの『セフィロス』がつぶやいた。

 そのときである。

 弾かれたように、あちらの世界の『クラウド』が、レオンの後ろに身を隠した。

 

 

 

 

 

 

「お、俺……戻らないからッ!アンタのところには帰らない!」

 『クラウド』が『セフィロス』に向かって、まるで山猫が逆毛を立てるように、シャーッと吠える。

 『セフィロス』は無言のまま、その様を見守っている。

「なんだ、取り込み中か?」

 面白そうにそう言ったのは、我が家の方のセフィロスであった。

「あ、い、いや、これは……その……」

 レオンが言葉を続けられなくなって、ぐっと詰まる。

 ……どうやら、『クラウド』は、レオンと『セフィロス』の特別な関係などまるきり知らず、目の前に現われた『セフィロス』が、自分を連れ戻そうと誤解している様子だ。

 

「そんな場所でもめている場合じゃないだろう。こちらはひどく大きな地震があったんだ。

空間のゆがみが原因ならば納得がいく。亀裂の側にいるのは得策じゃない」

 時空のゆがみを見られるジェネシスが、声を掛ける。

 確かに彼の言うとおりだ。コスタ・デル・ソルとホロウバスティオンが連結された場所に突っ立っているのはあまりにも危険だ。

「三人ともこちらへ。……どういう事情かは知らないが、危険な場所に居るのは好ましくない。私たちの家へ移動しよう」

 私が声を掛けると、助かったと言わんばかりにレオンが同意を示した。

 

「『クラウド』、ヴィンセントさんの好意に縋ろう。ここは危険だ。……『セフィロス』、アンタもだ。皆でコスタ・デル・ソルのほうへ移動すべきだ」

 レオンがそう言うが、それでも黙したまま突っ立っている『セフィロス』のところへ、私は足を進めた。やや強引だったかも知れないが、彼の手を取り引っ張った。

「さぁ、『セフィロス』。とにかく安全な場所……私たちの家へ来て欲しい。話があるなら、そこで話せばよいだろう?」

「…………」

 何もしゃべらないが、それでも引っ張られるままに、『セフィロス』は私と一緒に歩き出した。

 『クラウド』はレオンの背後にしがみついたままだ。

 ヤズーが上手く立ち回って、彼らを自宅に誘導する。

 思いがけないことになってしまったが、まずは危険回避が肝要であった。