トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<4>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 私たちが家に戻ってきて、まもなく我が家の方のクラウドも仕事から帰ってきた。

「いや~、超焦ったわー。ちょうどノースエリアからこっちに戻ってきたところだったんだけどさ~、すごい揺れだったよね」

「ク、クラウド……大丈夫だったのか」

「うん、ヘーキヘーキ。ノースエリアのほうはどうだったのか知らないけど、イーストエリアはなんだかワンバウンドしたようなカンジだったよね。ドカーンって」

「……お、おまえが無事だったならば良かった……大変なことになっていてな」

 私の言葉に、レオンを挟んでにらみあっている……いや、にらんでいるのはホロウバスティオンの『クラウド』のほうだけだが……

 この状況を見て、クラウドは『大変なこと』を、ホロウバスティオンの三人組のことだと勘違いしたらしい。私はコスタ・デル・ソルとホロウバスティオンという異世界が、海岸線で繋がってしまったことを指したつもりだったのだが。

 

「おい、『クラウド』。おまえ、真っ青だぞ。ちょっと別の部屋行って休んだ方がいいんじゃないか?」

 同じ顔をした我が家のクラウドが、未だにレオンにしがみつかんばかりに警戒している『クラウド』に向かって言葉を掛けた。

「……でも……」

 『クラウド』が居心地悪そうに言い淀む。上目がちに『セフィロス』を盗み見て、その様子を探っているようだ。

「大丈夫だよ、『クラウド』兄さん。俺と一緒にサンルームに行こう。美味しいお菓子もあるし、気に入るんじゃないかな」

 敢えて軽い調子でヤズーが呼びかける。

「う、うん……」

「『クラウド』、大丈夫だ、行ってこい。ヤズーすまないが、彼を頼む」

 レオンが『クラウド』の背を撫でるようにしてそう促した。

「う、うん……わかった。レオンは……その大丈夫?」

 と、聞き返すのは、『クラウド』が、まだふたりを敵対関係にあるものと認識しているからなのだろう。

「俺は問題ない。ここに皆居るからな。安心して休んでこい」

 繰り返し促されて、『クラウド』はようやく腰を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、困ったことになりましたな!さぁさぁ!」

 手囃子を打ってそう言ったのは、もちろん我が家のクラウドだ。

「どうします?お二方!さぁさぁ!」

「ク、クラウド……茶化すのはよしなさい」

 私は、眉間に深い溝を刻んでいるレオンを横目で見ながら、クラウドを制止した。だが、困った顔をしているのはレオンだけで、『セフィロス』のほうは表情が変らない。

「おい、レオン。まさかとは思うが、事情を打ち明けようとか考えてねーだろうな」

 低い声でそう言ったのは、我が家のセフィロスだった。

「それは……その……俺は……」

 繰り返し考えて言葉を繋げるレオンに、『セフィロス』が口を挟んだ。

「そんなに難しく考える必要はないだろう。何も言わなければいい」

「セ、『セフィロス』……?」

「あの子は我々のことにまるで気付いていない。私があの場所に居合わせたのは、『クラウド』を連れ戻すために来合わせたのだと勘違いしている。このままにしておけばそれでよいではないか」

 『セフィロス』の言葉に、私が何かを言う前に、レオンがするどく言った。

「アンタを仇のままにしておけというのか?まるでアンタのことを裏切るような行為ではないか!」

「しっ、レオン、声が高いよ」

 ジェネシスがサンルームのほうをちらりと見て、しっと指を唇の前に立てた。

「あ、ああ。すまん。だが……俺は『セフィロス』をないがしろにするような真似は……」

 両膝に肘を着き、両手をもみ合わせ、落ち着かなさそうにレオンがつぶやく。

「バカか、貴様は。何事も正直に告げるのがいいわけじゃないぞ。幸い、『セフィロス』はここに居る。ふたりで上手く話を合わせれば、『クラウド』を傷つけずに済むだろう」

 どこまでも現実的に……というべきか、『クラウド』を優先したアドバイスするセフィロスだ。

 シンと場に静寂が落ちる。これ以上ないほどの苦悶の色を浮べるレオン、無表情の『セフィロス』に、しっかりと前を見ながら話を進める我が家のセフィロスだ。

 私は何の発言も出来ないまま、重い沈黙を受けとめるしかなかった。