トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<5>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

  

「……ではさしあたってのところはどうすべきか。私は『クラウド』も君たちも、我が家に落ち着いてもらえれば安心なのだが」

 私は本心をそう告げた。

 ねじ曲がって連結された空間のよじれは危険だ。

 空気の対流が巨大なナイフのように、行き交っている。

 となると彼らがホロウバスティオンに戻るという選択肢はない。状況が落ち着くまで、コスタ・デル・ソルに居てもらわなければならない。

 まさにそう考えていたとき、『セフィロス』がぼそりとつぶやいた。

「……私はホロウバスティオンに戻る。……レオン、おまえたちはこの家の世話になるといい」

「わ、私は反対だ……!」

 声が高かったせいだろうか。皆がいっせいに私に注目した。

「ちょっと待ってよ。俺もヴィンセントに賛成」

 とクラウドが応援してくれる。

「面倒ごとは勘弁だけど、今、ホロウバスティオンに戻るのは危険だよ、『セフィロス』。空間のよじれとは言っても、これまでに規模がないくらい大きなゆがみなんだから」

「『クラウド』……私は問題ない」 

 と、『セフィロス』は素っ気ない。

「ダメだったら。アンタが無茶なことをすると、ヴィンセントが心配する」

「ふふ、おまえは何を置いても『ヴィンセント』なんだな」

 不快な様子でもなく、『セフィロス』がそう言った。

「す、すまない、別にクラウドはそういうつもりではなくて……とにかく今、ホロウバスティオンに戻るのはあまりにもリスクが大きい。この『ゆがみ』が消滅して、あらためてホロウバスティオンへの安全な道が開かれるまで、ここで待っていて欲しい」

「…………」

 『セフィロス』は口を噤んだ。これ以上何か言っても無駄だと思ったのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

「ハイ、それじゃ、反対意見がもうないなら、ホロウバスティオンの三人は、安全な状況になるまで我が家に滞在と……これでいい?」

 クラウドがそう言ったが、何度も頷き返すレオンに対して、『セフィロス』は一度も首を縦には振らなかった。

「『セフィロス』……どうだろうか。なんとか了承してもらえまいか。いくら君であっても、ひとりでホロウバスティオンに帰すわけにはいかない。危険だというのはよくわかっているだろう?」

 彼の手をとって、噛んで含めるようにそう告げると、『セフィロス』は小さくため息を吐いた。

 

「『クラウド』と一緒の場所に居るのは不可能だろう。少し考えればわかることだ」

「だ、だが、それは、彼に事情を話して……」

 レオンがそういうのを遮るように、

「事情を話すという選択肢はない。そっちのセフィロスも言っていただろう」

 言葉を挟んだ。

「だったら、君は俺のところに来ればいい。それなら、安心だろう?」

 すかさず提案したのは、如才ないジェネシスであった。

 確かに、ジェネシスのようにしっかりしている人物になら、『セフィロス』を任せることもできよう。このままホロウバスティオンに単身で帰るといわれるよりは遙かに良い。

「どうだい、『セフィロス』」

「それは……」

 『セフィロス』が口を開く前に、手厳しく却下したのは、我が家のセフィロスだった。

「却下だ。貴様のところはいかん」

「どうして?こう見えて俺と『セフィロス』は親しい友人なんだよ。この家がダメならば、俺のところに来るのが一番いいじゃないか」

「変態の家には行かせられん」

 セフィロスが無下に言う。

「失敬だな、俺は紳士だよ」

「ああ、変態という名の紳士だな。とにかくジェネシスの手は借りん」

「それじゃどうするつもりだよ」

 ジェネシスがそう言うのに、セフィロスは、

「セントラルのホテルでかまわんだろ。そこなら、家から近いし、ヴィンセントが通うのにも安心だ」

 すでに決定事項のように言うのだった。