トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
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 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

  

「それでかまわない」

 自分のことを言われているのにもかかわらず、どうでもよさそうにそう答え、『セフィロス』はさっさと席を立ってしまった。

「ではな、私はセントラルへ行く」

「『セフィロス』……!待ってくれ、俺も…… い、いや、送っていく。ゆっくり話もしたいし」

 レオンが食い下がったが、あっさりと我が家のセフィロスに却下された。

「貴様はいちいち動じるな。今は『クラウド』のことだけ考えろ」

「だ、だが……!」

「それが一番大事なんだと言ってんだろ!ヴィンセント、『セフィロス』を送ってやれ」

 セフィロスに言われて、私はすぐに車のキーを取り出した。

「……いや、歩いていく。このあたりの地理も知りたいし、今日は風が気持ちいい」

「だ、だったら、私も一緒に歩いて付き添うから!」

 私は慌ててそう告げた。

「……子どもではないのだ。わざわざ送ってもらわずとも……」

「私が送っていきたいのだ。一緒に歩こう」

 そこまで言うと、それ以上、彼は何も言わなかった。

 最後までレオンが物言いたげにしていたが、今は我が家のセフィロスのいうとおり、何も知らない『クラウド』の気持ちを優先すべきなのだろう。

 何よりも『セフィロス』が後ろを振り返ったり、レオンに声を掛けたりすることはなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「……『セフィロス』、その……こんなことになってしまったが、どうかあまり気に病まないで欲しい。レオンの気持ちが君にあるのは事実だ」

「ヴィンセント・ヴァレンタイン。おまえのほうこそ気にするな。私はなんとも思っていない。それよりうるさい護衛付でなく物見遊山が出来そうで良かった」

 レオンが聞いたらあんまりだと思うセリフを、『セフィロス』はしらっと吐いた。

「そ、そう考えれば気分的には良いのかな。何もホテルの部屋に閉じこもっている必要はない。コスタ・デル・ソルならば、私も案内できる」

「……おまえはうるさくなくて、一緒に歩くのに良い……レオンとは大違いだ」

 あまりの物言いにさすがにフォローを入れる。

「レオンは君のことを本当に好きだからな。ついつい口うるさくなってしまうのだろう」

「…………」

「『セフィロス』……?」

 急に黙り込んだ彼の名を呼ぶ。少し高いところからこぼれた声は、疲れたようにも聞こえた。

「……もともと……無理があったのかもしれない」

「何のことだ?」

「レオンとのこと……そもそも不自然な結びつきだ。私にレオンは不似合いだと思う」

「え……あ、あの……」

 戸惑っている私を横目に、『セフィロス』はつらつらとしゃべりだした。

「……『クラウド』を私から保護したのはレオンだ。あの男のことだ。誠心を尽くしてあの子を大切にするだろう」

「そ、それは……そうしなければならないとは考えていようが……」

「私のことを好いているというのは、一時の気の迷いなのではないだろうか。だいたい私のどこを好きになったのかもわからないし……」

「レ、レオンは言葉が不得手だ。君に尽くすことは出来ても歯の浮くようなセリフを口には出来ないのでは無かろうか。そ、それも彼の誠実な心根を反映しているのだと思う……!」

「ヴィンセント・ヴァレンタイン……おまえはずいぶんと必死にレオンの味方をするのだな」

 クスクスと笑いながら、『セフィロス』が私を見る。楽しそうな笑みを浮べているのだが、どこか寂しげにも感じられる。

「な……『セフィロス』。こんな形になってしまったが、レオンのことを信じてあげて欲しい。私はいかに彼が必死に君を想っていたかを知っている。だから……」

「だったら、私は『クラウド』にとって、どうしようもない邪魔者だな」

 何の抑揚もない棒読みのようなセリフに、私は思わず足を止めそうになってしまった。