トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<11>
 
 セフィロス
 

 

  

 

 

 オレの部屋には、今、めずらしい客が来ている。

 ヴィンセントだ。

 洗濯物を持ってきたり、部屋に飾る花を抱えて現われることは多いが、こうして顔つき合わせて、語り合う機会はめったになかった。

 

「なんにせよ、どうしてもレオンが『セフィロス』をあきらめない。『セフィロス』のヤロウもレオンの側にいたいという話ならば、レオンのヤツが『クラウド』と『セフィロス』のふたりを上手く捌くしか方法はないだろ」

 堂々巡りの問題に、オレは乱暴に回答した。

「はぁ……結局、そうなってしまうのだな」

 彼は深くため息を吐いた。

「人ごとにあまり首を突っ込むな、ヴィンセント。ただでさえ、おまえは神経質なんだからな」

「……私には何もできないのか」

 相も変わらず人の良い男だ。ヴィンセントらしいといえばそのとおりなのだが。

「お人好しも大概にしておけ。おまえが神経すり減らせてどうする」

「……すまない。君にも迷惑を……」

「オレのことなんざどうでもいいんだよ」

 ついいらついた声が漏れた。どうにもこいつが他人のことで煩わされるのを見るのは不愉快に感じる。オレ自身が関わっていることならばかまわないのだが。

 

 

 

 

 

 

「セフィロス……よければ君も、彼の居るホテルに同行してくれまいか?」

 おずおずとヴィンセントがそうささやいた。

「『セフィロス』の?どうしてオレが、同じツラしたヤロウの居る場所に行かねばならないんだ」

「その……退屈しているようだし、『セフィロス』は私には話せないことでも、君には話すだろう?レオンとのことだって、このままだと勝手にあきらめてしまうかもしれない。そうはさせたくないんだ」

「だから言ってんだろ。そいつは他人事であって、おまえが……」

「き、君の言いたいことはわかっている。でも……どうしても、気になってしまって」

「…………」

「……あ、あの……」

「…………」

「あ、あの……怒ったのか?」

「何を」

「わ、私がしつこく言うから……」

 オレの無言をどう解釈したのか、彼は恐縮したようにつぶやいた。

「別に怒っていない。……わかった。気が向いたら、ヤツのところにも行ってやる」

「あ、ありがとう、セフィロス…… 君に相談してよかった」

「そのかわり、レオンの野郎はおまえが何とかしろよ。オレにすりよってこさせるな、気色悪い」

「ど、努力しよう」

 ヴィンセントはそう言って話を切り上げた。

「言っておくが、おまえの頼みだから、聞いてやるんだからな。そこのところをよく覚えておけよ」

 オレは敢えてそれを強調したが、ヴィンセントは意味がわかっているのか否か、ただ「ああ」と頷いただけであった。