トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<13>
 
 セフィロス
 

 

   

「てめぇらのことなんざどうでもいいがな。一度はレオンを受け入れたんだろ。だったら……」

「おまえはヴィンセント・ヴァレンタインのいうことならば聞き入れてやるのだな。現にこうして早まったことをするなと私を説得に来ている」

 ヤツはからかうようにそう言った。

 オレと同じアイスブルーの瞳が、こちらを見つめる。まるで鏡を見ているような……おかしな気分になる。

「ヴィンセントがヒステリーを起こすと面倒なことになるからだ。なんせ、あの家の人数分の腹を満たしてくれているヤツだからな」

「そういう話ではないのだろう。……前々から訊ねたかったのだ。どうして彼をさっさと手に入れないのだ。おまえならばたやすいことだろう」

 人の気も知らずに『セフィロス』はそうささやいた。

「……時期ではないだけだ。いずれ、クラウドもヴィンセントも連れて行く」

 どこへとは言わずに、オレは答えた。

「ふん……ではそのときが来たならば、迷わずに奪えるというのか」

「…………」

「クラウドはよほどヴィンセントを愛しく思っている様子だがな。そんなあの子から、彼を取り上げるような真似が出来るのか?」

「言ったはずだ。クラウドもヴィンセントもオレの気に入りだ。両方とも手に入れる。くだらん話はここまでだ」

 と言って、オレは話を切り上げた。

「今は、貴様のことだ。……嫌いでないのなら、しばらくレオンに付き合ってやってもいいだろ。あの男もバカじゃない。なんとかおまえの世界の『クラウド』をいなして、貴様との付き合いを継続させるよう努力するだろう」

「さても面倒なことだな」

「人ごとのように言うな。……今度会ったら、レオンを安心させてやれ」

「ずいぶんとおやさしいのだな」

「あの男の必死の形相を、毎日見させられればそう言いたくもなる。あの野郎の悪趣味は理解しがたいが、何にも代え難く貴様を想っているという気持ちだけは事実だろう」

「……わざわざ、こうして出向いてくれてまで、おまえが言うのだ。話は素直に聞いておこう」

 そういうと、ヤツはふたたびザクロを囓り始めた。

 

 

 

 

 

 

「元気だったと……?」

「ああ」

「食事もちゃんとしていたか」

「ザクロ食ってた」

「……睡眠も……」

「あいつはいつも寝ているようなカンジだろ」

「セフィロス!彼に会ってきたのだろう!ちゃんと答えてくれ!」

「しっ、大声を出すな。『クラウド』に聞こえるぞ」

 中庭に居るチョコボ頭をちらりと盗み見て、オレはレオンを押さえた。

 傍らにはヴィンセントとヤズーが茶器を持って鎮座している。

「……カダージュたちと遊んでいるんだろう。ここでの話なんか聞こえやしない」

「あの子は敏感だからな。気配を察知して、戻ってくるということも考えられる。落ち着いて話してくれたまえ、レオン」

 ヴィンセントが穏やかにそう言った。

「おい、オレ様は貴様の気持ちに配慮して、このまま付き合いを続けろと言ってやったんだぞ。感謝しろ」

「セ、セフィロス……」

 ヴィンセントが、レオンの顔色をうかがうようにして、オレの腕を引っ張った。

「このまま続けろって……『セフィロス』が俺と別れるとでも言ったのか?そうなのか?」

 身を乗り出すようにしてレオンが訊ねてきた。

「いちいち反応するな。鬱陶しい」

 それを押しのけて、話は終わりというように、オレは立ち上がった。

「安全な時空の裂け目を見つけたら、先に帰ると言っていた。おまえは『クラウド』と一緒に帰れ」

「……ッ、『セフィロス』はひとりで帰ると……?」

「三人一緒に仲良く帰るわけにはいかんだろ。それくらいわきまえろ」

 オレがそう言うと、レオンは苦しそうにため息を吐いた。