トライアングル コネクション
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<14>
 
 セフィロス
 

 

   

「ねぇ、レオン、おれに何か隠していること……無い?」

 夕食後、ソファに移って、デザートを楽しんでいる最中に、『クラウド』がつぶやいた。

 その視線はとなりに座ったレオンを、きっちりと捉えている。

「……そんなことはない。おまえは何も気にする必要はないんだ」

 レオンはその目線に耐えきれぬように、顔を背けて応えた。

 我が家のクラウドと違って、ホロウバスティオンのほうの『クラウド』はずいぶんと敏感だ。やや神経質といってもいい。そんな彼の目から見ると、ここ数日のレオンの様子は、常と異なって見えるのだろう。

「レオンはいつもそういうけど…… ここのところ、よく眠れないみたいだし、いつも何か考え込んでいるじゃない」

 思い詰めた様子で『クラウド』が迫る。

 ヤズーが気を利かせて、カダージュたちを風呂場へと誘導した。

「……おまえの気のせいだ。俺は別に……」

「ほら、また目をそらす!」

 するどく『クラウド』が言った。 

 雲行きが怪しくなってきた。ヴィンセントがオレに『この場に居てくれ』というような目線を寄越す。

「ねぇ、レオン。あの日からやっぱりおかしいよ。『セフィロス』と一緒にいたときから……」

「…………」

 無言のままで押し通すレオンに、彼はなおも言い募る。

 ごまかされないぞ!というようなひたむきな眼差しでだ。

 

「……『セフィロス』に何かされたんじゃないの……?」

 小さな声が震えている。どこか怯えを含んだそれは、ずっと訊ねたかったのに口にできなかった言葉に思えた。

「『セフィロス』に無理やり……」

「……何を言っているんだ、おまえは」

 レオンがするどく制止したが、『クラウド』の声は高くなるばかりであった。

 

 

 

 

 

 

「だって、前に『セフィロス』が言ってたんだもん。レオンのこと好みだって、興味があるって…… だから無理やり……何かされたんじゃ……」

 どうやら『クラウド』は、レオンのヤツが、『セフィロス』に襲われたのだと勘違いしているらしい。

 彼らふたりの関係を知っていれば、とんでもない誤解というか、上下が逆とでもいうべき勘違いなのだが、ずっと『セフィロス』に弄ばれてきた『クラウド』にしてみれば無理もないのかも知れなかった。

「バカをいうなッ!俺が『セフィロス』にって…… 逆だ!俺のほうが彼を……」

「わーっ、わーっ、わーっ!」

 部屋に戻っていたヤズーが、大声を上げて、ヤツの叫びをかき消した。すかさずオレがレオンの後ろ頭を殴る。

「レ、レオン……君は少し疲れているのではないか。早く風呂に入って休みたまえ」

 ヴィンセントがレオンの腕を引っ張り上げた。

「あ……い、いや、俺は……」

「いいから、さっさと出て行け!」

 レオンを無理やり居間から蹴り出すと、未だに複雑な顔をしている『クラウド』に、声をやわらかくして言ってやった。

 

「実はな。レオンと『セフィロス』は、例の13機関の件で共闘したことがあるんだ。オレとジェネシスも一緒だった」

「え……あ、あの、この前来たとき?」

 『クラウド』がすぐに見当を付けて訊ね返してきた。

「そうだ。おまえには敢えて言わなかったのだが、そのとき、『セフィロス』はオレたちの味方をして13機関と闘ったんだ。そういったいきさつがあるから、レオンは複雑な気持ちなのだろう」

「……なんで……話してくれれば良かったのに」

「おまえのことを思いやって言わなかったんだ。気持ちが乱れると思ってな」

 オレの言葉を『クラウド』は黙って聞いていた。

「だからレオンと『セフィロス』には、おまえを抜きにしても面識というか……関わりができているんだ。だから、レオンの身を案じる必要はない」

「そう……だったの」

 納得してくれたのか、『クラウド』は頷いた。

「レオンがボケているのはいつものことだろ。ほら、『クラウド』、おまえもさっさと風呂に入って眠れ。明日あたり、ジェネシスに空間のゆがみがないか確認しにきてもらうからな」

「うん……」

 彼は素直に返事をすると、宛がわれた部屋へ引き取っていったのだった。