IN Wonderland
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<15>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

  

 

「足跡発見ーッ!」

 テーブルまわりの草を、踏みしめた大きな足跡をクラウドが見つけた。

「これは簡単だったな、証拠のあしあとだ。テーブルまわりを歩いている」

 レオンが頷いた。

「だが……その、大きな足跡だな。これはどう見ても……『セフィロス』の……」

 ブーツの足跡だと思うと続けようとしたが、

 レオンが『しょうこのあしあと』をカラーボックスの中に収めた。

「大丈夫だ、ヴィンセントさん。これは『セフィロス』の足跡ではなく、『アリスの足跡ではない』証拠だ」

 きっぱりとそう言うのに、私とクラウドはぎこちなく頷いた。

「それじゃレオン、この『爪あと』も……」

 私はアップルパイの残りを指さした。そこには間違いなく『爪あと』が残っている。アリスよりも遙かに大きな手の持ち主のものだ。

「そう!『アリスの物ではないつめあと』だ!別に『セフィロス』のものとは限らない」

 力強く言うレオンに、クラウドが呆れたような声を上げた。

「いや、これ、どう見ても『セフィロス』の……」

「誰か、大人の男の物だ。『セフィロス』のと決まったわけじゃない」

「……レオン」

「さぁ、まだ証拠は二つ残っているぞ、この茶会場が怪しい。徹底的に調べるぞ。アリスの物ではない証拠をな」

 

 

 

 

 

 

 茶会の椅子に、きらきらと光るものを見つけた。

「これは……証拠のとげ?」

 それは長い銀色の髪である。

「レ、レオン……この長い髪……」

 言いにくそうに伝えた私に、レオンはまたも頭を振りながら、『しょうこのとげ』を受け取った。

「なるほど、このきらきら光るものが証拠のとげか」

 そのまま不思議な箱に収める。

「いや、それって、とげというかもう完全な物証だよね。『セフィロス』のロン毛じゃん」

「他にも銀の髪を持った輩がいるかもしれないだろう。『セフィロス』のものと決まったわけではない」

「いや、そろそろ現実見ようぜ。……ほら、『セフィロス』のにおいがする」

 クラウドが鼻をひくつかせてそう言った。

「なるほど……これが『しょうこのにおい』だな」

 私が頷くのに、レオンは黙ったままだ。                                       

「レオン……その、言いにくいが、すべての証拠の品が『セフィロス』を指している様子だが……どうすれば……」

「『セフィロス』のと言わなければいい。『成人男性の』ものとしておけば、少女は詮議から外されるだろう」

 重々しくそう言うと、証拠を集めた不思議な箱を手に乗せて見せた。

「ま、まぁ……成人男性といえば、ウソにはならないかも知れないが……」

 私がつぶやくのに、強く同意を示して、レオンが我々に声を掛けた。

「さぁ、もう時間がない。裁判所に戻るぞ。……そしてふたりとも。これらの証拠はすべて『セフィロス』のものではない。あくまでもどこかの成人男性のものだ」

「ヴィンセント……」

「クラウド……」

 私とクラウドは顔を見合わせたが、レオンはずんずんと先に進んで行ってしまった。