IN Wonderland
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<19>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

  

 

「あー、よかった、ヴィンセント、無事に帰ってきて~」

 人なつこいヤズーと、その兄弟が私に飛びついてくる。彼らはスキンシップが何より好きなのだ。

 昼下がりの時刻なのに、セフィロスがどこにも行かないで、家に居てくれたことも嬉しかった。

「ねぇ、向こうでは何もなかったの?怪我とかしてないよね?」

 矢継ぎ早にヤズーが訊ねてくる。すると私が返事をするよりも早く、クラウドが口を挟んだ。

「俺が一緒に行っているのに、ヴィンセントに怪我を負わすはずないだろ。ふたりとも無事だよ」

「それならいいけど。ところでホロウバスティオンはどうだったの?レオンたちには会えたんでしょう?」

「あ、ああ、もちろんだ。彼らもとても元気で……」

「そうだ。せっかくだからお茶にしよう。ケーキがあるからそれを食べながら、話を聞くよ」

 ヤズーが手回し良く、茶会の準備をしてくれた。

 セフィロスも、面倒くさそうにだが、輪に加わってくれた。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、ワンダーランドにねぇ。『不思議の国のアリス』ってどんな娘だったの?」

 ヤズーがミントティーをすすりながら、興味深そうに訊ねてきた。

「あ、ああ、青いドレスを着た、とても美しい少女で……」

「待ってよ、アリスちゃんに会う前にとんでもないことがあっただろう。あっちの世界の『セフィロス』が無断で着いてきちゃってさ~。のんびり鳥かごに囚われてんの」

 クラウドが手を振りながら、呆れたようにそう言った。

「おまけに裁判に掛けられててさ。ハートの女王が作った手作りパイを食べちゃった下手人を捜してるんだよ」

 クラウドの言葉に、ストーリーに記憶のあるヤズーが頷き返した。

「ああ、そうそう。裁判のシーンがあったよね。アリスが無実の罪で裁かれるってヤツ」

「そう、まさしく無実なんだよ、アリスちゃんは。女王のパイを勝手に食べたのは『セフィロス』なんだから」

 わずかな間隙の後、

「あの人らしいねぇ……お菓子大好きだからね」

 というヤズーの言葉に、つい私も噴き出してしまった。

「そ、そうなのだ。パイを食べてしまって、一応捕まるような格好になっていたのだが、そこは『セフィロス』だ。あっさりと檻を破って自力で抜け出した。たいしたものだ」

「別にそこ褒めるトコじゃないだろ、ヴィンセント。俺たちは証拠探しでしっかり迷惑かけられたんだから」

「まぁまぁ、クラウド。今思い返せば、それも楽しかったではないか」

「終わりよければすべてよしってコトだね」

 いたずらっぽく笑うヤズーに、私は頷き返した。

 

「いや、それよりヤバイことが起こってさぁ」

 どこか楽しそうなクラウドの声だ。案の定彼は、最後の三角関係のことを持ち出した。