〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<1>
 ザックス・フェア
 

 

「え……ええぇぇッ!? こ、告白……!?」

 平和な昼下がり……その安寧に満ちたひとときを、この男はまんまとぶち壊してくれた。

「そうだ。ようやく決心がついた」

「いや……決心って、それはアンタが一方的に……」

「入社してから数ヶ月……クラウドも大分慣れた頃だろうし……」

「いや、数ヶ月って、まだ3、4ケ月だろ!? つい、この前、研修旅行のゴタゴタが片付いたばかりなんだから!」

 俺は、ダン!とMTルームのデスクを叩いた。

 ソルジャーに収集がかかり、この部屋で打ち合わせをした後に何となく残っていたら、この始末だ。 

 ああ、さっさと自分の執務室に戻れば良かった!

 ……あ、いや、この展開を考えれば、残っていて正解だったのか?

 俺がいなければ、何の断りもなく、さっさと告白しに行ってしまっただろうから。

「あーあの、研修旅行な。オレ様の株が上がったと思わねーか?」

 そんなふうにいうと、独りよがりの英雄は、さもしてやったりという様子でほくそ笑んだ。

「…………」

 ……むかつくけど言い返せない。

 実際、危機一髪のクラウドを救ったのは、セフィロスなわけだから。

「……まぁな。あの一件については俺もアンタには感謝してる」

「そーだろそーだろ。だから、協力しろ」

 いけしゃあしゃあと述べてくるセフィロス。

「……それとこれとは話が別だ!」

 俺はふたたび、バシッと机を叩いた。

 

「あー、盛り上がってるねェ。どうしてザックスはそこまで反対するのかなァ」

 のんきな甘ったるい声が耳元で響いて、俺はすっ飛び上がった。

「うわっ! ア、アンタ、いたのかよ!?」

「失敬だなァ、ザックス〜」

 ジェネシスは、いつものようにヘラヘラ笑いながら、俺たちのとなりの椅子に座った。

 なんでも先ほどから部屋に残っていたのだという。

 ……セフィロスのとんでも発言に、五感をやられてまるきり気がつかなかった。

「おい、よけいな茶々入れをするな。……今、大事な話をしているところだ!」

 ごく真剣に宣うセフィロス。

 

 

 

 

 

 

 ……そりゃ……

 そりゃさァ、俺だって、なにも絶対に反対というわけじゃない。

 結局のところ、選ぶのはクラウド本人だし、俺はただあいつのダチってだけで、セフィロスの恋愛沙汰について部外者だ。

 それに、この前の決死の救出ダイヴを見た身としては、セフィロスの本気は痛いほどよくわかる。これまでの玄人相手の遊びではなく、クラウドのことを本当に特別に想っているということ……

「だがよ…… やっぱり……ちょっとなァ……」

 思わず口からこぼれ落ちたつぶやきに、セフィロスは即座に反応した。

「なんだ、テメェ、いつまでもグズグズと! 言っておくが、オレ様は断りを入れてんじゃねーぞ! すでにそのつもりなのだから、貴様も協力しろと要請してんだ!」

 どこまでも偉そうな英雄。

 いや……これでこそ、ソルジャークラス1st、神羅の英雄か。

「いや、ちょっと待てよ…… 俺の話も聞けって」

 そういいながら、迫ってくる英雄を押しとどめた。

「……なんだかんだ言ったって、アンタらは、クラウドと一緒に寝起きしているわけじゃないからな。あの子のことはよくわかんないだろ」

「そりゃ、どういう意味だッ! 自分のほうが側に居るからふさわしいとでもいうのかッ!」

「かみつくなよ。俺は全然そんな気ないんだから。……とにかく聞けって、セフィロス」

 何度も中断させられるが、俺は辛抱強く話を続けた。

 ジェネシスは、先ほどから興味津々の表情で話を聞いているが、口を出してはこない。

「クラウドさ、今、十四なんだよな。……夏にひとつ年取るけど」

「そんなこと知ってる! あの子のバースディは、当然チェック済みだ!」

「いや、だから、そこじゃなくて…… あのさ、アンタって、15、6歳のころ、どんな生活してた? っつーか、ぶっちゃけ、性生活とかは?」

 俺はかなり直球で質問した。

「あー、十五〜? 別にフツーだろ。女とも適当に付き合ってたし……」

「ほら、そこだよ!」

 思い切り、ズビシと指摘してやった。

「アンタは15歳前後の頃、普通に女性とも付き合っていた。……たぶん、初体験も済ませてたんだろ」

 ちょっと早すぎる設定かとも思ったが、そんなふうにカマを掛けてみた。

 しかし、

「そんなもん、もっと前だろ」

 と、なんのてらいもない返事が戻ってくる。

 あっさりと言い返してきた英雄には、俺が言わんとしていることがわからないらしい。

「そうか……そうだよな、アンタなら。アンタの14,5歳と今のクラウドでは、年は同じでも全然違うんだよ!」

 手振りを交えて続けた。

「クラウドは女の子と付き合ったことすらないんだ! それどころか……」

「あぁ、そうか…… それはいいな。ふしだらな女の相手なんざ、あのクラウドにさせたくはない……」

 夢見る眼差しでつぶやくセフィロス。そんな野郎に、さらに言葉を重ねようと思ったが、ジェネシスの質問のほうが早かった。

「でも、ザックス。あの子にはティファちゃんがいるだろ? それなりの交際はしてたんじゃないのか?」

「ジェネシス、この野郎ッ! 決まってんだろ、あの巨乳娘の一方的な片思いだッ! クラウドはなんとも思っていなかったに違いないッ」

 すかさず割ってはいるセフィロス。しかしまぁ、このオッサン……よくもまぁ、都合良く……