〜 告 白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<1>
 ジェネシス
 

 

 

 品の良いリネンのカーテンから、うっすらと朝の陽射しが差し込んでくる。

 思うに、調度品は、天然素材のものが、もっとも上品で人間の感性に合うと思うのだ。

 

 そう口にすると、周りの連中は『へぇ』と意外そうな顔をする。

 どうも俺という個性を曲解しており、『技巧的なもの』『瀟洒なもの』……常に流行の最先端を行くものだと考えているらしい。

 

 関心のない連中に、いちいち嗜好を説明する必要もないのだから、そのまま流している。

 

 めずらしくも今日の目覚めは悪くない。

 

 もともと低血圧で朝が苦手な俺だ。

 ここ数日……そう、例のテロリストの一件で、セフィロスが思いの外重傷を負ってからは殊の外眠りが浅かった。

 

 さっとシャワーを浴びて、着替えを済ませる。

 朝食は摂らない。ただ単に食欲がないからだ。

 

 執務室の前に、立ち寄りたい場所があった。。

 

 場所はメディカルセンター。

 もちろん、セフィロスのお見舞いである。

 

 

 

 

 

 

 軽くノックをしてもいらえはない。

 毎度のことなので、こちらもいちいち気にしないのだが。

 

「やぁ、おはようセフィロス。気分はどうだい?」

 今日の天気のごとく、爽やかな口調でそう言ってやった。

「……チッ、毎日、毎日……よくもまぁ、こんな場所に顔を出すな」

 『こんな場所』というのは、メディカルセンターのことを言っているのだろう。もちろん、楽しいアトラクションがあるわけではないが、今は彼がいる。

「毎日って……まだ、おまえが入院してから、たった一週間だろう?」

「……一週間って七日あるんだぞ。まぁ、てめェに言っても無駄だな。好きにしろ」

「本当にどうでもよさそうに言ってくれるね。俺は対であるおまえが心配でならないのに」

 やれやれと両手を広げてからかうように頭を振った。セフィロスがからんでくるかと思ったが、彼は起こした半身をドサリとベッドに戻した。

 

「……セフィロス。もう、ドクターからは、自室静養でよいと許可が出ているのだろう? 早く戻ってきてくれよ。同じフロアにおまえがいないと寂しいんだ」

 半ば冗談ではなく、俺はそう告げた。

 ソルジャー・クラス1stは、いわゆるエグゼグティブルームをもらっている。

 出入り口にセキュリティがかかっており、誰でも気軽に通行できる作りにはなっていない。

 アンジール、セフィロス、俺の三人は、棟の同じフロアに部屋があるから、それなりに行き来はあるのだ。

 真面目なアンジールが、俺の部屋に来訪する機会は少なかったが、セフィロスは時間を選ばずやってくる。あくまでも己の身勝手な事情で、だ。

 例えば、『酒に付き合え』だの『腹が減った』だの、そんな理由だ。

 

「てめェ、わざわざ医者に訊いたのか?」

 セフィロスがじろりとこちらを睨んだ。

「自然に耳に入ったんだよ」

「ケッ、そういや、てめェ、メディカルセンターの女たちと懇意だったな。節操なし野郎が」

「……ふふ、それはどうでもいいじゃないか。それより、俺の願いを聞いてはくれないのか?」

 ねだるように頼んでみた。彼はあっさりと『気色悪ィ』と顔を反らせ、そのままゴロリと寝返りを打った。