〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<17>
 クラウド
 

  

「クラウド、ルーネス!」

 とっさにイングズが、おれたちふたりを庇うようにして転がった。

「なん……なんだ、今の」

 グルルルルと獣のようなうめき声が聞こえる。

「伏せてろ……!痛ッ……」

「イングズ、怪我……」

「大丈夫だ。動くな」

 『神羅の実験動物が逃げた』

 ふとそれを思い出した。

 チカチカと点滅する明かりの中、映し出されたのは、長い髪に碧い瞳をもつ長身だった。一瞬、セフィロスさんかと思ってしまったおれはバカものか。

 いや、どこか似ている……?

 爪が長く伸び、牙をもつその顔は、綺麗なセフィロスさんの面影はないけど、長い髪と黒いコートのせいで、そう見えるのだ。

「なんだ……あれ」

 ルーネスもヤツを見たのだろう。不思議そうな声でそうつぶやく。

「グルルルル……」

 喉を鳴らせてヤツはこちらから距離をとった。

 と、次の瞬間、動物じみた格好で、割れた廊下の窓から飛び出していった。

 黒い影はもはや跡形もなく消え去ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「よし、行ったな!ルーネス、すぐに教官に知らせろッ!クラウドは寮長起こしてこい」

「イングズ、腕から血が……!」

 おれはあわてて首に掛けてきたタオルで、彼の左腕を押さえた。

「俺は大丈夫だ。それより実験動物だな、あれは……中庭からどこへ逃げた。メディカルセンターの方向か?病棟だと人が少ないからヤバイぞ」

「びょ……病棟!?」

 思わずおれはその言葉に反応した。

 今はセフィロスさんがそこにいるはずだ。でも、普通の状態でじゃない。テロリストに負わされた怪我を回復させるために入院しているんだ。

 

 ……知らせなきゃ!

 セフィロスさんに知らせなきゃ!

 

 そう思ったときにはおれは駆けだしていた。

 モンスターが怖いなどという感覚さえもなくなっていた。安心して療養しているセフィロスさんのところへ、今のヤツが襲いかかったとしたら……?

 

 今度こそ、ただじゃすまない。

 セフィロスさんが死んじゃうかもしれない……!

 

「クラウド、どうしたの、どこ行くの!」

「びょ、病棟に知らせてくる!」

「待って、危ないから……」

「行ってくる!大丈夫!」

 

 迷いもなく階段を駆け下り、夜の闇の中を突っ切って病棟に……セフィロスさんのいるところへ早く……!