〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<18>
 クラウド
 

  

「夜の病棟ってなんでこんなに気味が悪いんだろう……」

 どうしよう、だれもいないのに……もし、あのモンスターがすでに入り込んでいたとしたら……

 真夜中の一時過ぎ……

 メディカルセンターにも灯りはついておらず、いつもいるはずの宿直の先生も不在のようだ。きっと街の方の騒動に駆り出されているのだろう。

 

「エ、エレベ……ター……エレベーターは……」

 慣れない場所におれはうろうろとエレベーターを捜した。

 怖い怖い……怖い……

 今にも後ろから、あの碧い瞳をしたモンスターが跳びかかってきそうに思える。

 はぁはぁって聞こえるのはおれの呼吸の音……ドクンドクンっていうのは、心臓の音だ。

 大丈夫だいじょうぶ……

 

 エレベーターを見つけてボタンを押した瞬間、そいつはおれの背中を狙って飛び出してきたんだ。

 

 ザシュッという嫌な音が耳元で聞こえた。背中がすごく熱くなってくる。

「グオォォォォォォッ!」

 モンスターの咆哮が耳元で聞こえて、おれは夢中でエレベーターの閉ボタンを押した。

 背中……熱い。でも、大丈夫。だいじょうぶだ、あいつが一階に居たっていうことは、セフィロスさんは無事だ。今すぐおれが知らせに走れば必ず間に合う。

 背中……熱いけど平気。間に合う間に合う……!

 

 

 

 

 

 

 VIPルームのフロアに到着して、おれは急いでエレベーターから降りた。

 大丈夫……大丈夫……ヤツは下のフロアだ。どれだけ急いでもこの階までは来られていない。

 おれはセフィロスさんの部屋の前まで来ると、ドアをノックした。

 本当はのんびりこんなことをしている余裕なんてないのに。なぜかきちんとした態度をとってしまうのは、やはりおれにとってセフィロスさんは特別で……

 ああ、できれば、『返事』もしなくちゃ。おれもセフィロスさんのこと好きって言わなきゃ。

 背中の傷のせいなのか、おれはちょっと頭に血が上っているようだ。

「セ、セフィロスさん、セフィロスさん!」

 ドンドンとドアを叩くが、眠っているのかいらえがない。

 思い切ってドアノブに手を掛けると、カギを掛けていないのか、そこはあっさりと開いたのであった。

 おれは思いきって部屋の中へ入った。今はそんなことに躊躇している場合じゃないんだ。

 ああ、背中、熱い。

 ううん、痛いのかな、いや、やっぱり熱いや。

 

「セフィロスさん、セフィロスさんッ!」

 おれは巨大な寝台まで近寄ると、眠り込んだセフィロスさんの肩を揺すぶった。

 久しぶりに見るセフィロスさんは、やっぱり綺麗で……寝顔のせいかちょっと可愛い風にも見える。ああ、いや、そんなこと言ってないで起こさなきゃ。

 おれは部屋の内側からカギを掛けたのを確認すると、もう一度、今度は大きな声でセフィロスさんの身を揺すった。

「セフィロスさんッ、セフィロスさんッ!!」

「む……なんだ」

「セフィロスさん、起きてくださいッ!」

「な……?ク、クラウド!?」

「は、はい。あ、あの……ッ、今……」

 しどろもどろになったが、おれはなんとかセフィロスさんに事情を説明できた。

「それで……おまえ、ひとりでオレに知らせに来たのか……?なんて無茶なこと」

 セフィロスさんは俺の肩を抱くように腕を回した。

「痛ッ……!」

 びりびりと痺れるような痛みが背中から頭を突き抜けた。

 背中の傷……やっぱり痛いのかも知れない。

「どうしたここ……血が流れているじゃないか!」

「え……あ……ここ……来る前に……」

「いいから傷口を見せろ。血を止めないと……」

「お、おれは大丈夫です。セ、セフィロスさんが無事でよかった……」

 素直に思ったことを言っただけなのに、セフィロスさんは息を詰めておれを抱きしめてくれた。背中の傷に障らないように、そっとそっと抱いてくれたのだ。