〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<19>
 クラウド
 

  

「あ、あの、おれ…… おれ、セフィロスさんに言わなきゃ。おれ、セフィロスさんのこと好きです。大好きです。ちゃんとそういう意味でも好き……です」

「クラウド……」

「こ、こんなときにおかしいのかもしれないけど……で、でも、言わなくちゃって思いました。セフィロスさんが無事で、こんなに嬉しい……嬉しいんですッ」

 よし、言えた。言えたぞ……!ちょっと疲れたけど……!

 ああ、力が抜けていく。

「クラウド……い、いや、今はそれどころじゃないな。背中の血止めるぞ」

 セフィロスさんはそういうと、シーツを引き裂いて手当をしてくれた。

「あ、ありがとうございます」

「礼を言うのはオレのほうだ。……ありがとう、クラウド」

 セフィロスさんはすごくやさしい声でそう言うと、『さて』としっかりと立ち上がった。

「後はオレの仕事だな。クラウドはベッドで休んでいろ」

「で、でも」

「ついでに館内放送をしてくる。刀がないのは少々厄介だが」

 そうだ、セフィロスさんの愛刀は、ここには置かれていない。おそらく私室のほうへしまってあるのだろう。

「セフィロスさん、ひとりじゃ危険すぎます。そ、それに……」

 それにあの人型モンスターは、どことなくセフィロスさんに似ていた。それが実験動物だというのなら、セフィロスさんの力をなんらかの方法でコピーしたのではなかろうか。

 あんなもの、セフィロスさん本人に見せたくない。

「そ、それに実験モンスターだから、どんな力をもっているか……」

「問題ない」

 有無を言わせない口調で、はっきりと言い切ると、セフィロスさんは部屋を後にした。

 もしかしたら、ルーネスたちが上手くやってくれて、味方がこちらに向かってくれているのかも知れない。いささか都合の良い考えだと思うが、そうでも思わないと彼の後を追いかけてしまいかねないからだ。

 おれでは足手まといになる。

 ちゃんとわかっているから、ここで待つんだ。

 

 

 

 

 

 

「全館内に告ぐ、全館内に告ぐ。正体不明のモンスターが館内に侵入した。全員部屋の鍵を確認し、その場に待機」

 力強いセフィロスさんの声が病棟に響き渡った。

 今この時間、この棟にどれくらいの人がいるのかはわからないが、これでほとんどの人たちの安全は確保できたはずだ。

 後はセフィロスさんが戦わずに部屋に戻ってきてくれれば……朝になれば、捕獲することも可能だろう。

「で、でも、セフィロスさんの性格を考えると……」

 そうなのだ。おとなしく部屋で待機するような人ではないだろう。

 まさか素手で相手をしようなどとは考えないだろうか。いくらセフィロスさんといえど、病み上がりに素手で、あんな凶暴なモンスターを相手にするなんて無茶に決まっている。

 それとも、刀を取りに、単身で、自室に戻るような真似をしているのではなかろうか。

「セフィロスさん……!」

 

  十分ほど時間が経つが、何て長い十分なんだろう。もう何時間も待っているような気分になる。やはりセフィロスさんは戻ってこない。

 どうしようどうしよう……!

 

「チョコボッ子、いるかい?」

 そのときだ。

 扉の向こうでおれを呼ぶ声が聞こえたのは。

「あ、ああ……!ジェ、ジェネシスさん、ジェネシスさんですか?」

「そうだよ、開けてくれる?」

 おれは急いで、ドアを開けに駆けた。背中の傷が引きつるように痛かったが、そんなことなど気にもならなかった。