〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<21>
 ジェネシス
 

  

 人型のモンスター……しかもセフィロスの力をコピーした輩。

 本当にこの神羅という会社は、どこまで醜悪なのだろう。人型の実験用モンスターなんて吐き気がする。ましてやセフィロスを原型に、真似て作るなんて最低だ。

「レノ、そういう話だ。セフィロスの前に俺たちで片をつけるぞ」

「どんなコピーなんだろうな、と」

「コピーはコピー。ただのモンスターだ。よけいなことは考えずに始末をつける。なんだったら、おまえはここまででいいぞ、レノ」

「冗談っしょ。せっかく手当してもらったのによ、と」

 レノは銃を軽く回してみせた。

「レノ、メディカル棟だ。セフィロスが館内放送をしてくれたから、やりやすいと思う。急ごう」

 レノと合流してすぐさま、病棟に戻る。

 

 必ずここにいるはずだ。

 人型のモンスター……人工知能までついているなんて、なんて厄介な。

 おまけにセフィロスのコピーを埋め込まれているなんて、ひどく嫌な気分になる。

 

「修習生が一階のエレベーター付近で、怪我を負わされた。まだ近くにいる可能性はあるからな」

「修習生って、例のセフィロスの?」

「まぁ、そんなところだ」

 

 人工知能を埋め込まれた人型のモンスターが、このメディカル棟を狙うというのは、やはりなにか意味があるのだろうか。

 

 ……よそう。相手を人だと考えては後手に回ることになる。

 

 

 

 

 

 

 一階のエントランスから、ゆっくりとエレベーターに向かって歩く。

 

 カシャン……!

 ……今、奥の方でガラスの割れる音がした?

 

 レノがさっと身構える。

 ……近くにいる。気配がある……?

 

 次の瞬間、

 グオォォォォ!

 と、背後から、黒い影が飛び出した。

 

 ガゥンガゥン!!

 レノの銃が火を噴いた。

「おぉぉぉぉ!」

 剣を抜くと、一気に空を裂く。

 だが、ヤツはふたたび咆哮すると、俺たちと間合いをとった。

 武器は何だ……あれは爪なのだろうか。

 長い銀の髪、黒のコート。なるほど、セフィロスをもとに作り出した人型モンスターか。

 だが、ヤツは人の動きというよりも、遙かに動物的だ。

「グオォォォォ!」

 壁を四つ足で這って、そのままこちらの懐に飛び込んでくる。

「うるあぁぁ」

 レノの銃は早いが、それを上回るスピードでそいつを避けている。

「くっ……」

 速い。

 さすがにセフィロスのコピー……いや、劣化コピーか。

 

 グルルルルル……

 間合いを詰めて、俺はレノの前に出た。

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

「グワッ!」

 刃が肉に吸い込まれる感触が、確かに手に残った。

 何度も斬りつけているのに、倒れるほどのダメージは与えられていない。それは相手の信じがたいほどの俊敏さがその理由だろう。

 捉えたと思うのに、すんでの所でわずかに躱されているのだ。

「ふッ!」

「グオゥ!」

 まただ。またもや躱してくる。

「はッ! これで仕舞いだ!」

「はァ!」

 レノの銃と俺の斬り込みが同時に重なった。

 手に、重い感触が残る。モンスターは、

 グオォォォォと、大きく咆哮すると、もんどりをうって倒れ込んだ。

 

 レノが廊下の電気を点けた。

 命の無くなった抜け殻は、明るい電光のもとで見るとたいそうグロテスクな生物に見えた。

 中途半端にセフィロスの原型を、写し込んでいるらしい。

 なまじそれが、胸の悪くなるような嫌悪感を醸し出させているのだろう。

 長い銀の髪に、碧の瞳。黒コート。しかし、その口は耳元まで避けており、身体からは何本もの触手がヒクヒクと蠢いている。

 セフィロスに見せることなく済ませられて良かった。

 命の無くなったその亡骸に、俺はコートを脱いで上から掛けてやった。

 わずかな哀れみと、俺自身がその姿を見ていたくなかったからだ。

 一刻も早くこの死骸を片づけるよう、俺はタークスのボスに電話を掛けた。