『奴隷調教~愉悦の孔奴隷~』
 
<1>
 
 KHセフィロス
 

 

 

「やぁ、ようこそ、『セフィロス』。君はずいぶんと、軍服の世界が好きみたいだね」

 目の前に開けているのは、重厚な絨毯と大理石の床が広がっているあの世界……

 そう、ジェネシスが総統などという身分になっている、淫靡で背徳的な世界だった。

 丸テーブルに着いているのは、にこにこと笑いながら菓子を楽しんでいるジェネシスと、相変わらずの仏頂面をしたレオンのふたりだった。

「せっかくなんだからテーブルに着いて、『セフィロス』。君も気に入るお茶を淹れてあげよう」

「…………」

「そんな青ざめた顔で突っ立てないで、せっかく総統が奨めているんだから、茶の一杯くらいいいだろう」 

 ジェネシスがさっさと茶器を準備しながらそう言った。

「…………」

「面倒なことになる前にテーブルに着け」

 そう言ったのは、しかめつらでコーヒーを飲んでいるレオンであった。

「……わかっ……た」

 よろよろと歩みだし、私は開いている席へ頽れるように腰を下ろした。

「焼きたてのスコーンと、薔薇の香りのする紅茶を奨められるが、手を付ける気にもなれない」

「ねぇ、『セフィロス』。そんなに俺の小説が気に入ってくれた?」

「……そういう……わけでは……」

 辿々しく私は応えた。

「またまたァ。ここのところ毎晩のように、扉を開けてやってくるじゃないか。それとも、俺たちに可愛がられるのがクセになったのかな」

「ッ…………」

「いいじゃないか、人はそれぞれさまざまな性癖を持っているものさ。俺はこうして君を鑑賞しながら、存分に虐めてあげるのが、至上の悦びだし、マゾ奴隷の君は、そんな俺たちに弄ばれるのが快感なのだろう?」

「……違う……私は……」

「君はいつでも口だけは反論するんだよね。ねぇ、レオンはどうだい?」

「…………考えたこともない」

 という、ひどく素っ気ない答えを口にするレオンであった。

「相変わらず、レオンはつれないねぇ。いざプレイが始まれば、それなりに楽しんでいるようなのに」

「…………」

 渋い顔で、ブラックコーヒーを飲み干す。

「それにしても、『セフィロス』。現実世界ではそんなに満たされていないの?君の恋人は君を満足させてくれないのかな?」

「そ、そんなことはない!」

 私は茶器を落としそうなほど、激しく否定した。」

「わ、私にはレオンがいる……レオンはいつでも私にやさしくしてくれる……」

 そうつぶやく私の顔を、この場にいるレオンが一瞥した。

 

 

 

 

 

 

「君のこの身体はただ『やさしく』されるだけじゃ、満足できないよね」

 ジェネシスの手が伸び、私の貫筒衣の留め具を外した。

「ジェ、ジェネシス……」

「どちらかというと、君は乱暴に扱われた方が興奮するんじゃないのかい?無理やり犯されたり、手足の自由を奪われて欲しいままに抱かれるのが望みなのだろう?」

 ジェネシスの手が私の服を肩から落とし、素肌をまさぐってくる。

「……レオンは……そんなことはしない……!」

 力を込めてそう言った。

「なるほど、それじゃ、君は最愛の恋人がしてくれない、真実の快楽を求めるためにここに来ているのかも知れないな」

「…………」

「服を脱いで『セフィロス』」

「……ッ」

「早くしなさい。ここでの君は軍の孔奴隷なんだよ」

 ……孔奴隷。ジェネシスはさんざんその言葉を使って、私を調教しようとする。

 嫌でたまらないはずなのに……

 はずなのに……どこかが甘く痒く……疼くような感覚に囚われる。

「はぁ……はぁ……」

 吐息が熱を孕み、下肢の一点がじわじわと浸食されるような甘やかな痛みなのだ。

「これから何をされるか考えただけで、熱くなっちゃう?『セフィロス』」

「……この世界にやってくると……身体が熱くなる」

 正直に私はそう応えた。

「正直でいいこだね。それでいいんだよ。ここにいる間は君の望みが叶うんだから」

 軍服の喉元のホックを外し、ジェネシスが笑った。

「じゃあ、服を脱いで。今夜もたっぷり可愛がってあげるよ」

 私は促されるままに裸身を晒した。

 レオンがコーヒーカップをソーサーに戻す。

「……で、今夜はどんな趣向だ、ジェネシス」

「もちろん、俺たちの孔奴隷を調教してあげないとね。興奮すると、まだまだ射精を我慢できないみたいだから」

「あ……」

 ぶるると身体が震える。

「言葉だけで感じちゃった?本当に君は可愛いね」

 ジェネシスに顎を取られ、深く口づけられる。逃げる舌を吸い上げられ、口腔の奥まで犯されて、ようやく身体を離してもらえる。

 しかし、すでに私はひとりで立っていることもおぼつかないほど、身体が痺れてしまっていた。