~この手をとって抱きしめて~
 
<4>
 
 スコール・レオンハート(レオン)
 

 

 

「あッ……あッ……あふっ……」

 俺の胸に手をついて、さらに腰を沈めるセフィロスだ。いったいどれほどの苦痛が彼を襲っているのだろう。

「痛ッ……く……」

「セフィロス……!」

 俺は彼の腰に手を添えて、無茶な試みを止めさせた。

「大丈夫だと……いうのに」

 がくがくと膝と腕が震えている。何をこうも焦って交合しようというのだろう。

「そんなに無理にすることではないだろう」

 身を起こして、彼を両腕で抱きしめ、腰を持ち上げてやる。

 白い肌が上気して紅く染まっている様は、ひどく艶めいていて目の毒だ。

「……物足りないと言っただろう」

 怒ったようにセフィロスが言う。

「貴様はそんなもので十分なのか。ただの自慰行為と変らないではないか」

「違うだろう……こうしてふたりで……」

「私のことが好きなのだろう?手に入れたいとそう願ったのだろう?だったら、もっと……」

「…………」

「……もっと、思いのままに欲せばよいではないか。好きなように触れれば……」

 彼の言葉は徐々に小さくなって、最後には聞き取れなくなってしまった。

「……セフィロス、どうしたんだ?」

「なんでもない……」

 頑固にもそれ以上何も口にしようとはしない。

「いいか、セフィロス。俺はアンタの身体が目的なんじゃない。……まぁ、それもまったくないとは言えないかも知れないが。いや、何より大切なのは、ふたりの気持ちが通い合うことだろう」

「…………」

 俺から目をそらせ、ぐっと口を噤んだままだ。

「だから、俺はアンタとこうして会話したり、一緒のベッドで寄り添いながら眠るだけでも満足なんだ、わかるか?」

 くどくどしく俺は彼に説教(?)をした。

 

 

 

 

 

 

「……ない」

 彼は頭を振って小さくつぶやいた。何を言っているのか聞き取れない。

「ん、どうした?セフィロス」

「そんなの……あり得ない。おまえはおかしい」

「どういうことだ……?」

「おまえは私のどこを好きになったというのだ。こんなに献身的に世話をする理由が他にあるというのか」

 上目遣いで俺をにらんでくる。

「前にも言っただろう。アンタはそのままでいいんだ。俺はそのままのアンタが好きなんだ」

「……私は何も出来ない」

 ぼそっとセフィロスは口を開く。

「日常生活のことも……ただ、美味しい茶を淹れるだけのこともできない。おまえが楽しめる話すら考えつかぬ。メールだって、何を書けばいいのかわからないし……」

「それでかまわない。今日、アンタが、メールの返事をくれただろう。それだけで俺は十分嬉しいんだ」

「レオンはもの好きだ」

 目も合わさず彼は低くささやいた。

「……セフィロス、もしかして照れているのか」

「……照れてなど……ただ、おまえが欲しがらないから」

「欲しいとは……いつも思っている。だが、一方的になるのは嫌なんだ」

 そう告げて、俺はセフィロスの頬を撫で、唇に接吻した。

「俺はこれだけでも満足なんだが」

 と、言ってみる。

「……欲しがられないと、不安になる」

 彼はぽつりとつぶやいた。

 どうしたというのだろう。不安になるというのは、俺の気持ちが離れるということを案じているのだろうか。

 今はこうしてセフィロスとふたり、特別な関係にまでなることができたが、どちらかというと、俺の方から口説き落として、出来上がったものだと思っている。

 愛想を尽かされるなら、愚鈍な俺にセフィロスが嫌気がさしてというパターン以外思いつかなかった。

 俺の方から彼を不安にさせることなど、あり得ないと思っていたのだ。