~この手をとって抱きしめて~
 
<11>
 
 スコール・レオンハート(レオン)
 

 

 

 

「セフィロス、俺だ、居るか?」

 アンセムの私室をノックする。いつもなら気怠げな声で、招き入れてくれるのだが、今日はいらえがない。

「セフィロス、いないのか?」

(…………)

 耳を澄ますと声が聞こえる。誰かと話している様子でもない。

 扉を押すと、そこは呆気なく開かれた。

 声の主はセフィロスだった。

 

 アンセムの寝台に横になっている彼は、どうやら悪夢にうなされている様子だ。

「う……あッ……あぁッ」

 手は羽布団を引きちぎりそうなほどに握りしめ、苦しげに呻いている。白磁のような肌は、うす桃色に上気していた。

 こんなときなのに、彼の有り様は目を奪われるほどになまめかしい。

 

 しかし、のんびりと眺めているわけにはいかない。俺はすぐさま彼を起こしにかかった。

「セフィロス、セフィロス!」

「あッ……あぁッ……やッ」

「セフィロス、しっかりしろ!」

 背に腕を差し込んで、そのまま上体をぐいと持ち上げた。

「あ……ッ、ああ……レ、レオン……?」

「セフィロス、大丈夫か?」

「レオン……レオン……」

 長い腕が俺の背中に回される。

「落ち着け、悪い夢を見ていただけだ。なにも怖いことはない」

 やわらかく抱きしめ、背をポンポンと叩く。それでも彼は腕を解いてはくれなかった。

「レオン……」

 俺の名をつぶやいた唇が、俺のそれに押しつけられる。彼の舌が歯列を割って忍び込んでくる。

「ん……ん……」

 セフィロスは執拗なまでに、深い口づけを求めてきた。

 舌が絡み合い、互いの唾液が混じり合う。強く求めるような口づけに、俺はそのまま応えてやった。

 彼の身体を寝台に押しつけ、その上に乗り上げる。乱暴にならないような力で、彼の胸元をまさぐり、すでにピンと立ち上がった紅い突起を、摘み上げこね回した。

 

 

 

 

 

 

「ん……あッ、あッ」

 ようやく唇を解放すると、俺は喉元から胸へと舌でなぞりあげる。

「あぁッ」

 掠れた悲鳴が聞こえたが、そのまま愛撫を続けた。俺の下腹に当たるセフィロス自身が、すでに熱を持って立ち上がっていることに気がついたからだ。

 いつもの貫筒衣のファスナーを下ろし、素肌をあらわにする。俺も上着をまとめて脱ぎ捨てた。

「あッ、レオン……もっと、もっと……」

 まるで夢の続きを見ているような表情で、セフィロスがねだる。

 だが、今は身体の欲求に素直に従うしかなさそうだった。

 ぷくんと立ち上がった乳首を、舌でこねまわし、軽く歯を立てると白い身体が弓のようにのけぞった。

 片手を下着の中に潜り込ませ、乳首への愛撫とともに、軽く扱くと、彼のそれはあっという間に上り詰めてしまったようだ。

「あ、ああッ、レオン……い、イク……」

「いいから、そのまま出すんだ、セフィロス」

「やッ、あッ、あぁッ、あぁ……ッ!」

 ビクンビクンとその部分が震え、彼は俺の手の中に、こらえていたそれを存分に放った。

「あ……はぁ、はぁ……」

 ようやくおとなしくなったセフィロスの瞳に、涙がたまっている。快楽のなごりだったのかもしれないが、それがひどく痛々しく映り、俺は唇でそれを吸い取った。

 

「レオン……いやだ……恥ずかしい」

 消えそうな声で彼がつぶやいた。

 『恥ずかしい』……これまでの彼にはほとんど見られなかった人間らしい感情だ。

「恥ずかしくなど無い。……怖い夢でも見ていたのか?とにかく風呂場に連れて行ってやるから大人しくしていろ」

 汚れた服を下に落とし、俺は彼を抱き上げると、広い浴室へ連れて行った。手桶で湯を汲み、彼の背中を流してやる。

 ずっとうつむいたままで、まさか泣いているのではないかと不安になるが、無理やり話を聞き出そうとは思わなかった。