~この手をとって抱き寄せて~
 
<1>
 KHセフィロス
 

 

 

「んはぁッ!あ……あ……」

 広い寝台の上で、私は目を覚ました。

 

 ……ここはアンセムの私室……

 そのベッドの上に間違いなかった。

「あ……はぁ……はぁ……」

 弾む息を堪えると同時に、脳裏に『またか……』という声が聞こえた。

 

 また、私はあの世界へ行っていた。

 軍服と鞭の世界。

 

 仕置きとして、さんざん尻に鞭をもらい、何度も後孔に突き込まれて果てる、『孔奴隷』としての異世界へ。

 

 無理に立ち上がったが、衣装と肌がこすれて痛い。

 敏感になった乳首とペニスが、衣を持ちあげるように立ち上がっているからだ。

 

 これでいったい何度目の屈辱だろうか。

 昨日も同じような状態で目が覚めたのだ。

 

 衣装を乱暴に脱ぎ捨て、浴室に向かう。

 この場所は、いつでも湯が使えるのが本当に助かる。

 

 私はぬるめのシャワーを浴びると、すぐに熱い湯船に入った。

 

 ……いったいどういうことなのだろう。

 ジェネシスから持たされたみやげの官能小説を読むたびに、この状態に陥る。

 

 昨夜は軍服もののシリーズを読んだせいか、ジェネシスとレオンのいる、あの淫靡な屋敷で散々の痴態を演じてしまった。

 

 ふたりのペニスを咥えさせられ、口舌奉仕をさせられた後、何度も貫かれ、私は寝台に頽れた。しかしそれだけではない。

 孔奴隷として未熟な私は、『総統』の命のもと、仕置きとして尻に何発もの鞭をもらい、『おねだり』を何度もさせられた。

 

『いやらしい孔奴隷の孔を使っていただき、ありがとうございました』

『いやらしい孔奴隷に、お仕置きありがとうございました』

 

 私はジェネシスの足元に這い蹲って、その言葉を繰り返したのだ。

 

 

 

 

 

 

 ……いくら本を読んだからといって、このような恥ずかしい夢をたびたび見るのは異常だ。それもこんなにリアリティのある淫夢を……

 

「……コスタ・デル・ソルへ行ってくるか」

 私は一人つぶやいた。

 もちろん、ジェネシスに会いに行くのだ。

 これらの官能小説には、なんらかの仕掛けがある。だったら、これらの作者ならば何かわかるのではないか。

 

 私はそう考えた。

 そうでなければこの異常事態への説明がつかないではないか。

 ジェネシスに会って、その謎を解けば、そうそう淫らな夢を見ることもなくなるだろう。

 

 髪を洗うのも、そこそこに、私は浴室を出る。

 新しい装束を身につけ、長い髪を梳かし終える。

 

 時空の裂け目は、この城にいくらでもあるはずだ。

 その中には、おそらく彼らのいる、コスタ・デル・ソルへの道もあるはず。

 

 そう考えて私は部屋を出ようとした。

 この前のように、万分の一の時間圧縮がある裂け目を見つけられたら、わざわざレオンに居場所を教える必要もないだろう。向こうでの3、4日が、こちらの時間では一時間程度ということもある。

 心配性のレオンは、私がひとりで外出するのをひどく心配している。

 エスタに行ったときでさえ、わざわざメールを残したのにも関わらず、迎えにやってくるという有様だ。

 いずれにせよ、時空のゆがみを見つけてからの話だ。

 

 室内履きを履くと、私はアンセムの私室を後にしたのであった。

 

 時空のゆがみは思った通り、すぐに見つかった。

 ホロウバスティオンは本当に磁場が滅茶苦茶に展開している世界だ。

 

 私はアンセムの資料室から、足を踏み出し、一路コスタ・デル・ソルへと向かったのであった。