~この手をとって抱き寄せて~
 
<12>
 KHセフィロス
 

 
 

「さてと。なんでもいうことを聞くと言っていたね。さっそくやってもらおうか」

 楽しそうに言うジェネシスに、私は身震いした。ジェネシスはいつもにこやかにやさしい声で、とんでもなくつらい責めを与えてくるのだ。

 今度もついつい身構えてしまう。

「覚悟は出来てる?『セフィロス』」

「な、なにをしろと……」

「その場で自慰をして、イッてみせてくれ」

 ジェネシスはごく普通の口調でそう言った。

「な……」

「『セフィロス』のオナニーショーが見たいと言っているんだよ。そんなに難しいことじゃないだろう?恥ずかしくはあるだろうけどね」

「…………」

「さぁ、足を開いてそこに座ってさっそく始めてくれ」

「…………」

 私は迷った。このまま、ジェネシスを蹴り飛ばして、一路ホロウバスティオンへ帰ることもできる。

 ……そこまで考えたのだ。

 だが、結局私はジェネシスの命に従うことを選んでいた。

 まだ、淫夢の謎がとけないのと……いや、そんなことより、もっともっと気持ちよくしてもらえるのではないかという期待が大きかったのだ。

 

 私はスゥと息を飲み込むと、目を閉じて、勃起した自らの高ぶりに手を添えた。

 片手でやわやわと袋の部分を刺激し、もう一方は陰茎を扱く。

「あ……あふ……」

「いいね、可愛いよ、『セフィロス』」

 ジェネシスが熱い吐息混じりにそうささやく。声がとても近い。ものすごく側で行為を眺められているようだ。

 

 

 

 

 

 

「んっ……あっはぁ……」

 先走りが手を汚す。

 私は亀頭の先端をぐりぐりと押し広げ、竿の部分を扱きあげる。

 ぬっちゃ、ぬっちゃ、ぐちゅぐちゅ

 といやらしい音が、ひどくはっきりと聞こえる。

「あぁ、いっぱい溢れてきたね。もうそろそろ限界……?かな」

「はぁ……あぁん……」

「いいよ、もっといやらしい声を聞かせてくれ」

「あッ、あッ、あぁん、くっ……ふぅん」

 ずちゅ、ずちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ……

 雁の裏側も指先で擦り、ペニスの先端をさらに強く刺激する。

「あぅん、も……イク……あぁ、イクぅ……!」

 腰がガクガクと震え、私は上半身を突っ張らせた。

「あぁ……あぁん……!」

 ドピュドピュと白濁液が噴き出し、私自身の腹を汚した。

 

「いいこだよ。上手にできたね、『セフィロス』」

「はぁ……あぁ……はぁ……」

「さぁ、汚れちゃったところを拭いて上げようね」

 用意してあった蒸しタオルで、汚れた腹を拭ってくれる。その手つきのやさしいことも、私がこの場所から逃げ帰らない理由のひとつであると思う。

 ジェネシスにどんなひどいことをされても、また辱められても、私を労る手のやさしさや口づけに酔わされてしまうのだ。

 『お仕置き』をされているときでさえ、尻を撫でる手の優しさや、仕置きが終わった後のご褒美で、ついつい気を弛ませてしまうのだ。

 それを十分わかっているのか、ジェネシスはいつでも、私にやさしくささやくのだ。

 

「さぁ、今日はもう十分満足しただろう。もう一度シャワーを浴びにいくかい?」

 後ろから抱きしめられて、私はこくんとひとつ頷いた。

 だが、その後のことは覚えていない

 

 そのままぐっすりと眠り込んでしまったからだ。

 

 こうして私の一人旅の初日が終わったのであった。

 

 第一夜、終了。