~この手をとって抱き寄せて~
 
<13>
 KHセフィロス
 

 
 

 二日目の夕方。

 

 私とジェネシスは街に買い物に出てきた。

 もっともそれはジェネシスの目的であって、私はただ付いて歩いているだけだ。

 

「ふぅ……あ、う……ん」

「そんなに落ち着きがないとおかしく思われるよ、『セフィロス』」

 私の体内にある小さな機械が振動している。

 リモコンを手にしているのはジェネシスだ。

「今度はいったい……何の遊び、なのだ」

 ともすると頽れそうになる足を叱咤して、私はジェネシスに問いかける。

 

「ふふ、羞恥プレイ」

 ひどく楽しそうにジェネシスが言う。

「君だって期待して受け入れたんだろう?」

「だ、だが……こんな…… も……帰りたい」

 するとローターの振動が激しくなった。

「あッ……ん……!」

「孔奴隷はワガママを言ってはダメだよ。せっかく君の希望のものを買ってあげようと思って連れてきたのに」

「い、いったいどこに……」

「さぁ、着いた。やぁ、もうすぐ夜のとばりが下りてくる時刻だね。店に入りやすい雰囲気になった」

 そう言いながら案内されたのは、なにやら妖しげな雰囲気の店だ。

 入り口は瀟洒な作りになっているにもかかわらず、スモークガラスで一面に被われており、一見、何の店かもわからない。

 

 ジェネシスは遠慮無く扉を開くと、私に入るように促した。

 店内はなにやら不思議な香りが焚きしめられている。エキゾチックなその香りは初めて嗅ぐものだ。

 狭くはないはずの店内は、幾重にもカーテンで仕切られている。圧迫感を感じるようなつくりと不思議な香のせいで、自分が何かの胎内にいるような気分になってくる。

 

「ジェネシス……ここは……」

「目が慣れてきたかい?ここはちょっと薄暗いからね」

「…………」

 私は商品棚に陳列されているモノを観て、ぎょっと息を飲んだ。

 ぼんやりと光る棚に綺麗に並べてあるのは、グロテスクな男性器の形をしているもの……バイブレーターだ。

 ハッと傍らの棚を見ると、そこには今、私の体内に挿入されているものと同じもの……ローターが並んでいる。

 目をこらしてよく見ると、小さな陳列棚がたくさんあり、まるで宝石を扱うように、淫具を展示してあるのだ。

 

 

 

 

 

 

「ふふ、驚いた?ここは大人のオモチャを売っているお店だよ」

「…………」

 耳元でささやかれて、うっかり腰が抜けそうになる。尻の中に埋められたローターの振動が直接響いてきて、私は声を上げそうになってしまった。

「ほら、セフィロス。しっかり見て。どれが欲しい?」

「わ、私は……こんな……」

「恥じらわなくていいよ。君を気持ちよくしてあげる道具だ」

 ジェネシスの腕を掴んで、よろよろと歩きながら、それでも私は店の商品を夢中になって見ていた。

 バイブレーターのコーナーを過ぎると、何やらさまざまな器具の売っているスペースに出た。ボンテージスーツに、手錠や足枷、そしていろいろな種類のある鞭……いわゆるSMコーナーだ。

「はぁ……はぁ……」

「ここはSMコーナーだね。猿轡に蝋燭、鞭か…… どうしたの、息が荒いよ」

「な、なんでもない」

「ここになにか欲しいものがあるのかな?そう言えば、孔奴隷は鞭でお仕置きされるんだったよね。君はどの鞭が好き?」

「そ、そんな……私は別に……」

 必死に口を動かすが、濃密な香が漂うこの空間で、体内に淫具を埋め込まれた私はどんどん妖しい世界へ魅せられていくようだった。

 

 ……どの鞭がいい?

 ジェネシスに打たれるのなら……きっと綺麗なフォルムの……

 そうだ……手足を拘束されて、尻に何度も与えられて……すごく痛い鞭がいい……

 

「はぁ……はぁ……」

「乗馬鞭は痛いんだよ。それがいいならかまわないけど」

 そういうと、ジェネシスはカードのようなものをショーケースに差し込んで、私が凝視していた鞭を取り出した。