~この手をとって抱き寄せて~
 
<14>
 KHセフィロス
 

 
 

 

「バラ鞭は家にあるからね。それじゃ『セフィロス』専用でこの乗馬鞭を買おうか。さぁ、後は何が欲しい?」

 後は何がいるだろうか……

 身体を拘束するロープか手錠か……?

 いや、そんなものより、声を上げさせない猿轡のほうが屈辱的だろうか。アイマスクがあれば、より性感を高められるだろうか。

「はぁ……はぁ、あん……」

 暗い店内なのをよいことに、私は下肢を押さえてしばらくその場に佇んだ。

 

「ふふ……吐息が熱いよ。もう蕩けそうかい?」

「はぁ……あ……あぁ……」

「帰ったらうんと可愛がってあげるから。さぁ、今は欲しいものを選んで」

 ジェネシスがわざと私の耳元でそうささやく。

「どうやら君はSMコーナーに興味があるようだね。ああ、それはボディクリップだよ。乳首をいじめるときに使えるね」

 そういうと、それもジェネシスが取り出す。

「ああ、サイカフスなんかもある」

 ジェネシスが私に教える。

「サイ……カフス?」

「そうだよ。腕を太ももに固定する拘束具だ」

 あれを付けられたら、足を開いたうつ伏せの格好を崩せないだろう。

 私はそれを装着されて寝台に転がされる自身の姿を想像して、ぶるりと身震いをした。

「それから浣腸器具……イルリガートルやシリンジなんかも売っているね。こっちに興味がある?」

 そう訊ねられて、私は慌てて頭を振った。

「ああ、あれを買っていこう。君の内をじっくり見たいから、肛門鏡と、尿道用のバイブも欲しいね。風呂場で使えるから、入浴が楽しみになりそうだ」

「ジェ、ジェネシス……!」

 咎めるようにそういったつもりだったが、まったく言葉に力が入らない。

「さぁ、他には『セフィロス』?」

「はぁ……はぁ……も……いい。もう十分だ」

「いろいろとイケナイ想像をして、つらくなってきているみたいだね。ふふ、いつまでそうして立っていられるかな」

 そう言って笑うと、ローターの出力を強くされた。

「あぁ……あひぃ……」

 とうとう私は立っていられずに、背後のジェネシスに抱き留められた。

 もはや私の前はぎりぎりまで立ち上がり、いつ精液を放ってもおかしくないほど膨れ上がっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「手洗いに行こうか」

 会計を済ませたジェネシスが、私を抱きかかえるようにして、店内のサニタリールームに入った。妖しい店内の雰囲気をぶちこわさないようにという配慮だろう。洗面所も暗めのライティングで、凝った調度品などが並んでいる。

 その中の個室のひとつに、私たちはもつれあうようにして入り込んだ。

 

「あッ……あぁッ……ジェネシス……もう我慢できない!イキたい……ここで、イかせて……!」

 私は自分でエスタ風の長い装束の裾をまくって、ジェネシスに乞い願った。 

「こんなに固くして……いやらしい汁があふれ出しているね」

「あん……もう出るぅ……!触ったら出ちゃう……!」

 泣きながら私はかぶりを振った。

 ジェネシスは、私のいきり立ったペニスを手にすると、ゆるゆると上下に擦り始めた。

「あッ……いや、ダメ……出ちゃう……汚しちゃう!」

「これは特別サービスだよ」

 そういうと、ジェネシスは狭い個室の中でしゃがみ込み、吐き出す寸前だった私のペニスを口に含んだ。

 ちゅぐ、ずるっ、ぐちゅ……!

「あぁん……いやぁ……出る……出ちゃう……!」

 生温かい舌が、私の欲望に絡みつき、強く吸い上げた。

「あんッ、あッ、あッ、あッ、イくぅ……!」

 私はジェネシスの促しに従い、彼の口腔にずっと我慢していた精を放った。

「ふふ……はぁ……良かった?」

 つぷんと私の後ろからオモチャを取り出し、ジェネシスが訊ねてきた。

「あぁ……ジェネシス……足りない……もっとぉ……」

「もっとの続きは家に帰ってからだね。ここからは車で戻ろう」

 

 大通りに出て、タクシーを拾い、私たちはマンションまで戻ったのであった。