~この手をとって抱き寄せて~
 
<20>
 KHセフィロス
 

 
 

 

 

 三日目、昼近くに目覚めた私たちは、ブランチを取っていた。

 

「今日はちょっと片付けなければならないコラムがあるんだ。君は客間で本でも読んでいてくれるか?」

 とジェネシスが言った。

 もちろん、私には否応もない。

「あれから何冊か、新しい本も出ているから、よかったら読んで」

 そういいながら、ジェネシスは書庫の置いてある客間に連れて行ってくれた。勝手知ったる場所だ。

「この辺りは以前君にあげた本だね。これ以降は新しいものになる」

「……お茶とお菓子」

「はいはい、準備して持ってきてあげるよ。ちょっと待っておいで」

 ジェネシスは苦笑しながら、ジュースとフィナンシェを運び込んでくれた。

 

 彼が部屋を出て行くと独りになる。

 私はさきほど彼が教えてくれた新刊のうち、一冊を手に取った。

 

 『被虐の孔奴隷3~ふたりに愛されて~』

 『堕ちた天使3~軍服と鞭~』

 『奴隷調教2~愉悦の孔奴隷~』

 これらはシリーズの続き物だ。

 続刊が出ていると言うことは、それなりに人気を博しているということなのだろうか。

 

 私はそれらの三冊を抜き取り、ドキドキしながら読み始めた。

 

 

『いやらしい孔奴隷のお尻に、たっぷりと鞭をください』

 そういいながら、孔奴隷は、高く尻を掲げた。

 

『ご主人様のペニス……美味しいです。もっと、もっとください』

 ちゅぶ、ぐちゅ、と濡れた音が室内に響く。

 

『イかせて……!イかせて……ください。何でも致します。孔奴隷にご命令ください』

 孔奴隷は、主人の足に口づけ、繰り返し、乞い願った。

 

 

「はぁ、はぁ……」

 いつの間にか吐息が弾み、身体が熱くなる。

 本の中の、孔奴隷は、酷薄な主人に仕え、恥辱の中に落とされていた。それでも彼は与えられる悦楽に酔い、主人の飼い犬として必死に尽くしているのだ。

 少なくとも孔奴隷は不幸せではなかった。彼自身が主人に仕えその愉悦を望み、そこに身を沈めているのを良しとしているのだから。

 

 

 

 

 

 

「『セフィロス』、入るよ。ジュースのおかわり……と、また顔を真っ赤にして」

 クスクスとジェネシスに笑われて、私は慌てて鏡を見た。

「ノックくらいしろ。無礼者!」

 と私はジェネシスに文句を言った。

「ごめんごめん。そんなに必死に読んでくれているとは思わなかったから」

「し、仕事は済んだのか」

 私が訊ねると、ジェネシスは頷いた。

「ほら、もう四時を回るよ」

 そう言われてぎょっとして時計を見た。

 この部屋にこもってから、四時間以上が経っていたのだ。

「どれ……どの本を読んでいたの?」

 身体が触れ合うほど近くに腰を下ろし、ジェネシスが訊ねてきた。

「これらだ……続き物だったから」

「ああ、なるほど。新刊もなかなかハードだっただろう」

 作者としての自覚もあるのか、ジェネシスがそう言った。

 私はそれに素直に頷き返した。

「ドキドキした……こんなプレイ……」

「どれどれ?君だって似たようなことをしたじゃないか」

 そう言って笑われ、またもや私は頭に血が上ってしまう。

「やっぱり、何かの仕掛けがこの本にはあるのだと思う。読んだだけで、こんなに身体が熱くなるなど……」

「ふふ……また、したくなっちゃった?明日には帰ってしまうんだろう。今夜が最後の夜だ」

「身体の奥がズクズクする……」

「君がそのつもりなら、俺に否応はないね。本を読んで敏感になっている君を可愛がってあげられるなら本望だよ」

 そういうと、ジェネシスは、長い装束の上から手を忍ばせてきた。

 胸の突起のあたりをまさぐり、すでに熱くなってしまった股間に手を這わす。

「ここ……もうこんなに熱くなっている」

 耳元でささやかれて、身体がぞくぞくと震えた。

「本の中の孔奴隷がうらやましくなっちゃった?ああやって弄ばされたいのかな」

「あ……ジェネシス……手、手、放せ」

「どうして、ここ扱いて欲しいんだろう」

 そういうと、ジェネシスは巧みに裾をまくり上げ、勃起しつつあるペニスを握りしめた。