『~軍服と鞭~ 性の饗宴』
 
<1>
 
 KHセフィロス
 

 

 

 見慣れた扉を開くと、そこは勝手知ったる世界……

 軍服の将校たちが、性奴隷を飼っている、あの世界だった。

 

 なぜなら、総統の寝室の風景はすでに覚えてしまっていたし、ジェネシスのかっちりとした軍服姿は、これまで何度も見てきたからだ。

 

「やぁ、『セフィロス』。ちょうどいいところへ来たね」

 ジェネシスにそう言われて、私は困惑した。その言葉の意味がわからなかったし、軍服の世界にはあまり来たくはなかったからだ。

 

「これから面白い見せ物が始まるんだよ。せっかくだから君を連れて行ってあげよう」

「い、いや……私は……」

「遠慮することはないよ。俺の側に座っていればいい。ただし、ここでの君は孔奴隷だからね。首輪にリードをつけさせてもらうよ」

「……やッ……やめろ。何も見たくない。今日はもう帰……」

「言っただろう。一度扉を開けてしまえば、満足できるまで帰りの扉は現われないんだ。ワガママを言ってお仕置きされる前に、素直にいうことを聞きなさい」

 そういうと、ジェネシスは私をそこに膝立ちにさせて、首輪を付けてしまった。

「うん、サファイアは君によく似合うね。さぁ、リードをつければ終わりだ」

 宝石をちりばめた首輪に、長いリードを着け、ジェネシスは満足そうにそう言った。

 

「それではさっそく行こうか。広間に皆集まっている」

 くいとリードを引っ張られ、私はおとなしくジェネシスの後についていくしかなかった。

 

 総統の寝室を出て、他の部屋に行くのは初めてだ。

 季節の花が色とりどりに咲いているパティオに、華やかな装飾の施されている客間などを眺めると、軍の本部だと言いながら、ジェネシスの趣味が反映されているような雰囲気だ。

 

 到着したのは、天井の高い大広間であった。毛足の長い絨毯が敷き詰められた中央とそこを囲む床は、コの字型に一段高くなっている。

 段差のある床には、ゆったりとしたつくりの安楽椅子が着いており、すでにそこには何人かの将校が座っていた。

 

 ジェネシスはレオンを見つけ、軽く手を上げると、そのとなりの席に腰を下ろした。だが、そんなことはどうでもいいのだ。私は部屋に入ってから、中央で繰り広げられている猥褻な饗宴に目が釘付けになっていたのだから。

 コの字型で囲われた中央には、裸に首輪だけつけられた、少年や青年が三十人はいる。彼らはまぐわい、互いに慰め合いながら、腰を振っていた。

 性の饗宴……ジェネシスが見せたいものといったのは、このことだったのだ。

 

 

 

 

 

 

「ほら、『セフィロス』。俺の足元にお座り。いいこにしているんだよ」

 ジェネシスが私の頭を撫で、静かに側にしゃがみこませた。

 ぐちゅぐちゅという粘膜の擦れ合う音、パンパンと肌のぶつかる音、絶え間ない喘ぎ声に啼き声が響き、重厚な室内にこだまする。

 ある者は後ろにペニスを挿入されながら、自身のものをフェラチオされていたり、またある者は、別の少年に挿入しながら、自身のバックを別の青年に犯されている。

 その中には『クラウド』も居た。

 『クラウド』は長い銀の髪をした青年に背後から犯されながら、別の少年のペニスを咥え、必死に口舌奉仕をしている。また彼の乳首は背後の青年によって、こね回され、引っ張られて真っ赤に充血していた。

 

「はぁん……ああん……」

「あッ、あぁ、いい……」

「あッ、あッ、あんッ……!」

「あひぃ、イク……イクぅ!」

 甘く掠れた喘ぎ声や啜り泣きが、部屋に響く。その様を将校たちは酒を傾けながら眺めているのだ。

 ジェネシスの言っていた『見せ物』は、午後の暖かな陽差しを、どこまでも裏切るように、淫靡で背徳的だった。

 

「はぁ……はぁ……ん……」

 あまりにも扇情的な見せ物に、気づかぬうちに呼吸が荒くなる。

 股間が熱くなり、しゃがみこんでいるのがつらくなってきた。

 

「……退屈な見せ物だ」

 低い声でそうつぶやいたのは、となりの席に座っているレオンだった。

「レオンはこういう趣向は嫌いかい?」

 ジェネシスが問う。

「……そういうわけではないが……こういうことは見るものじゃない。やるものだ」

「ふふ、いかにもレオンらしい物の見方だね。後で気に入りの子を連れて行って、思う存分楽しめばいい」

「それもそうだがな」

 素っ気なくレオンが言った。

 私は目を中央に戻した。

 孔奴隷は皆見目のよい者ばかりだ。そんな彼らが組んずほぐれつして絡み合っている様は、あまりにも淫猥で、目のやり場に困惑する。

 『クラウド』はまた別の青年に後ろを犯されており、誰かのペニスをしゃぶっている。彼もこの饗宴に酔いしれているのだろう。とろりと溶けそうな眼差しで口を動かし、背後の青年の陽物を受け入れていた。