~この手をとって口づけて~
 
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「あッ、出る……ラグ、ナ……もう出る……」

「ん……いいね、気持ちいい、俺も……そろそろかな」

 にちゃにちゃ、ぐちゅぐちゅ……

 という淫猥な水音が、静かな寝室に響き、そのペースが徐々に早まっていった。

「出る……!」

「うん、いいよ、思い切り出して」

 寝台の上にあぐら座で座っていたセフィロスが、びくびくと身をのけぞらせ、堪えていた劣情をラグナが押さえたタオルの中に放った。ラグナもほぼ同時だったのだろう。向かい合わせでいた、彼もわずかに身を強張らせて、射精を済ませたのであった。

「ふー、あー、いい汗かいた!」

 と、おちゃらけてラグナが言う。

「セフィも満足したでしょ?」

「ん……眠れそうだ。だが、ここまででいいのか?ラグナは物足りないんじゃ……」

 不思議そうに問いかける白く美しい人を、なるべく視界に入れないよう、ラグナは頭を振った。

「ダメダメ、もう、俺も十分だから。セフィ、眠れるならば寝ちゃいな。夕食の時間になったら、起こしてあげるから」

「そうか……うん……ラグナ、眠れるまでここに居ろ」

「わかってるわかってる。大丈夫、ずっと枕元にいるからね」

 甘やかすようにそういうと、ラグナはセフィロスの携帯電話を取り出した。

「向こうの部屋に置きっぱなしだったから、どうしようかと思って。さっきからコールが入っているみたいだけど、どうする?」

「ん……眠い。どうでもいい」

「じゃ、ねんねの邪魔にならないように、向こうの部屋のチェストの上に置いておくからね」

 ラグナは銀色の小さな機械を手にすると、別室に置いてくる。

 寝室に戻ると、セフィロスはすでにスースーと寝息を立てていた。どうやら、枕元に侍る時間は必要なさそうだ。

 それでも、ラグナは寝台の上のセフィロスに、口づけると、

「おやすみ」

 とささやいてから、部屋を後にしたのである。

 

 

 

 

 

 

 レオンは、その日、十回目のコールをしていた。

 回数にしてみれば、それほど多くはないが、メールはその二倍は打っている。

「セフィロス、一体どこへ行ったんだ。メールの返信もできない状態なのか……!?」

 クラウドには何かと理由をつけて、城に在中しているレオンである。日々の仕事は何とかこなしていたが、何か手を動かしていなければ、心配のあまり気がおかしくなってしまいそうだったからだ。

「もしや……俺に後を追われるのが嫌で、黙って出掛けたのか?何故一言言ってくれないんだ……!」

 せわしなく携帯電話をいじり、ふたたびコールをする。

 すると今度は、セフィロスでない誰かが出たのであった。

 

「セフィロス?セフィロスか!?」

 電話がつながったのが、これ幸いというように、慌ててレオンが声を上げた。

「んだよ、デケー声上げんなよ」

「貴様……誰だ?ラグナか?」

 エスタへ行ったと言うことは、前に世話になった大統領官邸に身を寄せている可能性が高かった。それゆえ、電話に出たのがラグナかと瞬時に見当を付けたのだ。

「そうだよ。セフィなら、ぐっすり眠ってるぜ」

「アンタ、セフィロスをどうやってそそのかしたんだ!? 彼が無目的に自分からそっちに行くことはあり得んだろうッ」

 のんきなラグナの言葉に、レオンが牙を剝く。

「そそのかすなんて心外だなァ。俺はただセフィを祭りに誘っただけだよ。そうしたら、興味があるっていうんで、エスタに来たんだ。ただそれだけの話だろ。何を血相変えた声出してんだよ」

 めんどうくさそうにラグナが言った。

「セフィロスはエスタに行くとだけメッセージを残して、ホロウバスティオンから姿を消したんだ。心配するのはあたりまえだろう!?」

「おいおい、セフィはおまえの所有物じゃないだろ。意志を持った一人の人間なんだから、行きたい場所に自由に行き来するのは当然じゃねーか」

「……ッ」

「とにかく、明後日の祭りが終わるまでは、エスタの大統領官邸にいるぜ。それ以降の予定は俺も聞いていない」

「くそッ……わかった。明後日だな!」

 レオンはそこだけ確認すると、大人しく電話を切った。