〜パパ来襲〜
 
<7>
 
 スコール・レオンハート<レオン>
 

 

 

 

 

 

 

 

「行くはずがないだろう? お断りだ」

 すぐさまそう返す。

「……うん」

 ようやく頷いてくれたクラウド。その金のクセ毛を撫でてやる。

 

 ……本当にこいつは子どもと変わらない。

 剣の腕を含め、戦闘能力は群を抜いている。それは同じ剣士の俺も認めるところだ。それにも関わらず、メンタル面の不安定さ、幼さは見ているこちらが不安になる。

 セフィロスとの異常な関係が、それを促進する一端にはなっていようが、どうも生来の資質自体が、深く関わっているようにも見えた。

 

 クラウドのカップにおかわりのチョコレートを、そして自分にもコーヒーを淹れてから、話の続きを切り出した。

 

「……ラグナさんを……この家へ?」

「ああ、俺の生活ぶりをみたいなどと抜かしやがった。……まぁ、ホロウバスティオンに来てから、ほとんどヤツとはコンタクトを取っていなかったからな」

「……そうなんだ」

「俺がヤツの面倒を見ている間に、キロスが……大統領補佐官がこの街の視察をしたいのだそうだ。上手くすれば、援助の規模を拡大できる。……あの男は頼りになるからな」

「…………」

「それで、クラウド。本当にすまないのだが、ほんの二、三日、ラグナをここに置いてもいいだろうか?」

 そう訊ねると、クラウドは慌てて頭を振った。

「……そ、そんな……オレに断りを入れるようなことじゃないだろ? ここは……アンタの家なんだから」

「俺たちの家、だ。……おまえは単なる同居人じゃないんだからな」

「……ラ、ラグナさんに何て説明するの……オレのこと?」

「だから恋人だと言えば何の問題も……」

「問題ありまくりだよッ!」

 叩き付けるようにクラウドが叫んだ。

「そ、そんなの……仮にも実の親父が認めるわけないじゃん! ア、アンタ、大統領の息子なんだろ? その息子が……オ、オレなんかと……」

「おい、『オレなんか』という言い方はよせ」

 口調を改めて、ピシャリと言ってやった。

 普段は我が儘すぎるほどに高飛車なのだが、こういった状況に陥ると卑屈な態度を取る。クラウドの悪い癖だ。もっとも、これまでの経緯が彼をそうさせてしまっているのだろうが。

 

「ラグナは調子者で軽率なバカ親父だがな。人を見る目はある」

「……レオン」

「それにほんの二、三日のことだ。だが、どうしてもおまえが落ち着かないんだったら、マーリンの家に泊まってもかまわないし、どこかに部屋を取ってやる」

「う、ううん。そんなこと……大丈夫だよ」

「ラグナには大人しくしていろと言っておく」

 真面目な面持ちで、そう言った俺に、クラウドが吹き出した。ここに戻ってきてから、ようやくまともに見れた笑顔だった。

「ぷっ……ちょっと……いくらなんでも失礼だよ、レオン。大人しくしていろだなんて……仮にも一国の大統領相手に」

「あの男は本当にお調子者で危なっかしいんだ」

「……オレ、全然平気だよ。向こうが嫌でないんなら来てもらいなよ。なるべく、迷惑掛けないように気をつけるから」

「バカを言うな。おまえはいつもどおりでいいんだ」

「……うん。ありがと、レオン。オレ、頑張るから」

 そうつぶやくと、彼は淡い笑みを浮かべた。

 俺はホッと安堵の吐息をつく。

 クラウドを不安がらせず、納得させるのが一番の課題だったのだ。

 

  その後、何を勘違いしたのか、オレに簡単な料理の作り方を訊ねたり、部屋の掃除をすると言い出したのには辟易としたが、こうして少しずつ、身の回りのことを覚えていってくれたら、俺自身も助かると……そう思い直したのであった。