〜この手をとってささやいて〜
 
<2>
 
 スコール・レオンハート<レオン>
 

 

 

「ぼやっとするな、貴様の行く場所はあそこだ」

 セフィロスはそのまま強引に俺の腕を掴むと、空を飛び、見慣れた家の前に連れて来た。

 もちろん、クラウドたちの暮らす、イーストエリアの一軒家だ。 

「この場所にもうひとりの私がいるだろう」

「え……あ、ああ、もちろん、知っているが」

 俺は驚きの連続のあまり、途切れ途切れに答えた。

「その男に訊ねてみろ。いかにおのれが無益で見当違いな行動をしているのかわかるだろう」

 セフィロスはそういうと、勝手に呼び鈴を鳴らし、自身は翼を広げて、どこぞへと飛び去ってしまったのだ。

 

 俺は呆然とそこに立ちつくすしかなかった。

 家の中からは今の呼び鈴で誰かが出て来てしまうだろう。そうしたら、どう説明しよう。

 こっちの世界のセフィロスに相談すべき内容なのだろうか。いや、そもそも彼はそんな面倒な話に耳を傾けてくれる男ではなかったはずだ。

 

「えーッ、うっそレオンじゃん!?マジでレオン?おーい、みんなレオン来てるよ〜ッ!」

 この世界のクラウドの叫び声で、俺はようやく正気に戻ったのであった。

 

 

 

 

 

 

「まぁまぁ、よく来てくれたな、レオン。その格好……コスタ・デル・ソルでは暑いだろう。上着を預かろう」

 かいがいしいのはもちろんヴィンセントさんだ。懐かしそうに涙ぐんで俺の手を取ってくれる。

「っていうか、唐突だよな〜。なにまた空間のゆがみとかに取り込まれちゃったわけ?案外間抜けだよな、アンタって」

 べらべらとしゃべるのはクラウドだ。

「理由なんてどうでもいいじゃない。こうしてまた会えるなんて嬉しいよ。そっちのクラウド兄さんは元気?」

 これは女性顔負けの美貌をもつヤズー。

 皆、懐かしくも賑やかなコスタ・デル・ソルでの既知の人々であった。

「あ……そ、その……すまない、いきなり家を訪ねるような真似をして。その……俺はそういうつもりはなかったのだが、なぜかこのような事態に……」

「今回もまた何かのハプニングに見舞われたのか?」

 心配そうに訊ねてくるヴィンセントさんに申し訳なくて、俺は言葉を見つけて返答する。

「あ、いや、そんな深刻な状況ではないと思うのだが……あの、今日はこちらのセフィロスは……?」

「ああ、そろそろ帰ってくるんじゃないかな。ノースタウンのクラブに通ってるんだよ、あのエロエロ魔人は。昼前にでかけた日は、大抵夕食までに戻ってくるよ」

 とクラウドが教えてくれた。

「そ、そうか……その、ちょっとセフィロスに用事があるんだが……い、いや、それより、今は皆さんに再会できてとても嬉しく思う」

 頭を下げた俺にヴィンセントさんがやさしく笑う。

「君は本当に生真面目だな。元気そうで何よりだ。セフィロスも……子どもたちも帰ってきたら君に会えて喜ぶだろう」

「ヴィンセントさん……またも面倒を掛けて申し訳ない。手みやげ一つ持ってきていないし……」

「ふふふ、君はおかしなことを気にするのだな。ただ会えるだけで嬉しい人というのは居るものなのだよ」

 おかわりのハーブティを注ぎながら、彼は落ち着いた声でそうささやいた。