~この手をとってささやいて~
 
<25>
 
 レオン
 

 

 

風呂場から出ると、『セフィロス』がベッドの上に転がっていた。

 髪もきちんと乾かしたのだろう。湯上がりの心地よさに負け、ついうとうととしていたといった風情であった。

「……レオン、遅い。危うく眠ってしまうところだった」

 ころりと転がって、俺の方を見上げる。

「あ、ああ、いや、すまん。その……眠りたいのなら、かまわないぞ。まだ、目も治って日が浅いし、何も無理にすることでは……」

「クックックッ、そんなことを言っていては、いったいいつ王子様とお姫様は結ばれることか……」

 何がおかしいのか、ことある事に彼は俺の顔を眺めては、クスクス笑いをするのだ。

 ……楽しそうなのはかまわないのだが、なんだかこの俺がとんでもないミスを犯したのではないかと不安になってしまう。

「レオン……ひとつ訊ねるが」

 『セフィロス』がそう言った。

「な、なんだろうか」

「この場合、やはり私が受け身になるのだろうか」

 あからさまな質問に戸惑いつつも、俺は覆い被せるように答えた。

「お、俺はアンタみたいに、綺麗じゃないし、そちら側は不可能だと思うのだが」

「そんなこともないと思うがな。整った顔立ちをしているし」

 頬に手を添えられて、カッと熱がこみ上げてきた。

「いや……!俺に受け身は不可能だ。とても出来ない」

 握り拳をもって、しっかりと返答した俺に、またもや『セフィロス』は楽しげに笑った。

「いい。ちょっと、からかってみただけだ。……だが、私自身も、そちら側はほとんど経験がないのだが……」

「だ、大丈夫だ。できるだけやさしくするから!」

「やさしく、か……」

「そうだ、可能な限りそうする!」

「そんなに必死の形相で言われると、ますます可笑しくなって、笑ってしまう」

 『セフィロス』は笑い上戸なのだろうか。それとも、俺の受け答えがそれほどまでに面白いのだろうか。

「そんな不安げな顔をするな。……そのつもりで、ここに来たのだからな」

 そういうと、ベッドの上から、俺の腕を引っ張った。

 顔と顔が近づいて、俺は目を閉じた彼の唇に接吻した。この前のような軽いキスではない。

 彼の整った歯列を割り、奥まで舌を忍び込ませた。

 どこか甘く感じる彼の口腔内をなぶり、さらに深く口づけ、俺たちはもつれ合うようにして、ベッドに身を沈めた。

 

 

 

 

 

 

 手を彼のローブの中に忍び込ませ、滑らかな肌の感触を味わう。

 指先にぷくりとふくれた突起が当たる。そこをやさしく摘み上げ、擦ると、口づけたままの彼の喉がくっと鳴った。

 『セフィロス』を押し倒したまま、ローブの紐を解いた。

 あらわれた彼の裸体は、どこからどこまでも、白く透けるようで、俺はまじまじとその身体に見入ってしまった。

「レオン……おまえも脱げ」

 そう言われて、かなり長い時間、不躾な凝視を続けていたことに気付く。

 自分のローブを乱暴に脱ぎ捨てると、ようやく俺たちは裸のままで抱き合った。

 唇を彼の喉に滑らせ、そのまま鎖骨へ移動する。軽く甘噛みすると、『セフィロス』の指が、俺の髪にさしこまれた。

「……綺麗だ。アンタの身体はどこもかしこも真っ白で……」

 夢中になって、喉や胸に唇を這わすと、

「レオン、くすぐったい」

 と、笑われてしまった。

 紅く色づいてきた、胸の突起に舌を這わせ、軽く歯を立てると、切なそうなため息が漏れた。どうやらそこも十分感度がいいらしい。

 『セフィロス』の手が俺を抱き寄せるように動き、すでに固く張り詰めてしまったその部分にも触れられる。

「っ……」

 声にならない吐息が漏れる。

 まだ、口づけを交わし、肌に触れただけだというのに、十分俺のそこは熱を持って立ち上がっていた。

 風呂場で一度抜いた後だというのに……それ以上触られると、あっという間に達してしまいそうだ。

 なんとか俺は身体をずらせ、彼の脇腹をついばむように唇を動かした。

「ん……あ……」

 鼻にかかったような彼の吐息が、甘く掠れている。

 そして、さきほどから俺の腹のあたりに熱をもったものが当たっている。

 俺は下肢に手を滑らせて、彼自身をそっと手で包んだ。

 すると、それはさらに熱く固くなっていく。ゆるゆるとしごくと、徐々に立ち上がり始めた。

「あ……レオン……いい、気持ちいい」

 率直な言葉が、いかにも彼らしくて嬉しくなる。

 まずは、一度吐き出させてやって、緊張を解いてやるべきだろう。受け身側の負担は、経験がないが、『クラウド』のそれを見ていると、かなりの負荷がかかるらしい。

「もっと……レオン」

 そうささやかれ、俺は彼のものを口に含んだ。

「ん……」

 と、ため息混じりの吐息を漏らした。

 それと同時に彼の身体の最奥に、指を滑らせる。その狭い部分を使うのだから、十分に緩めてやらなければ、『セフィロス』がつらい思いをすることになる。