〜Second impact〜
 
<16>
 
 スコール・レオンハート<レオン>
 

 

 

 

 

 

 

 俺は無意識に、吐き出されたものを嚥下した。

 

 彼は仰臥したまま荒い吐息をくり返している。

 その様子がひどく苦しそうなので、そっと顔を覗き込む。すると、涙を含ませた蒼い瞳が、キッとばかりに見返してきた。

 

「なッ……何するんだよ! あんな……あんな……こと……ッ!」

「……何を怒っているんだ、おまえは?」

 そう訊ね返すと、ますます顔を朱に染めて、怒鳴りつけてくる。

「ヤダッて言っただろ! 髪の毛引っ張って、嫌って言ったのに!」

「その前に『もっと』と言っていたはずだ。よく覚えている」

 俺はありのままを彼に告げた。

 

 ……これはまずかったらしい。

 彼の怒りは照れ隠しだったのだろう。

 だが、無自覚とはいえ、それを思い切り無視し、恥部をさらけ出させるような指摘をしてしまったようだ。

 

「なッなッ……なんだよーッ!! レオンのバカーッ! 無神経ヤローッ!! オ、オレの、オレのこと……なんで、あんな……」

 先が続かないクラウド。

 おそらく交渉の流れ的には、おかしな行為ではなかったはずだから、非難の言葉が思い浮かばないのだろう。

 

 このまま、怒らせていても埒があかないので、激昂する彼の言葉を遮り、俺は口を開いた。 

「すまないがクラウド、続きをやりたい。中断できるだけの余裕がないんだ」

 至極真面目にそう告げた。半泣き顔になっていたクラウドの目が丸くなる。

「……続きをって……」

「すまないが、おまえのように感情をあらわにすることに慣れていないんだ。俺だって普通の男だ。当然興奮している」

「……こ、興奮って……」

「おしゃべりはおしまいだな」

 やり取りにピリオドを打ち、枕を掴んでいたクラウドの腕を押さえつける。

 おそらく勢いにまかせて、そいつを投げつけるつもりだったのだろう。この前は居間でクッション攻撃を喰らったばかりだ。彼の得意技だ。

 

 一度、吐き出したそれを、もう一度指先で刺激してやる。上下に扱きつつ、下腹から腰骨のあたりへ口づけを繰り返すと、若い彼の身体はたちまち反応してくれた。

 ふたたびせわしない呼吸を紡ぐ彼。

 

「あッ……あッ……レオン……ヤダ……よ、また……俺ばっかり……」

 顔を片腕で隠し、苦しげにつぶやく。

 俺は吐き出しかける寸前で手を止め、クラウドの耳元に口を寄せた。

 

「……クラウド」

「……レオ……ン」

「脚……もう少し開いてくれるか」

 俺の顔を直視できないのか、目を閉じ、おずおずと両の脚の距離をとる。

 

 多少余裕ができたその部分に、手をゆっくりと滑らせる。驚かせないように、内股を撫で、最奥へと到達する。

  

 肉体の一番奥深くを探られ、クラウドの身体が戦慄した。

 シーツを掴む指を空いた方の手で外してやり、俺の背に回してやる。

「レオ……ン?」

「……力を抜いてくれ、クラウド」

 俺は彼の紅く染まった耳元に、噛んで含めるようにそうつぶいた。

 

「ん……ッ あっ……」

 指を動かすたびに、小さくうめくクラウド。

 背にしがみつく指に力が込められる。

 

 先ほどの残滓が動きを助けてくれるが、その部分はひどく狭くて、無理に押し開いたら壊れてしまいそうだ。

 彼の表情を窺うが、苦痛を堪えているだけには見えないが、到底心地よいようにも見えない。

「……痛いか?」

「平気……」

 という思った通りの答えが返ってくる。

 二本に増やした指をゆっくりと前後に動かし、反応を見る。

 

「も……平気だから……」

 クラウドが目を閉じたままつぶやく。

「いや……だが……」

「大丈夫……レオン」

 彼は繰り返した。

 わずかな間隙の後、俺は意を決した。

 大げさな物言いかと思うだろうが、まさしくその言葉が適切な心境であった。

 

 両の脚を割り広げ、身体をすすめる。

 もし、一言でもクラウドが耐え難いという意思表示をしたら、すぐに止められるように頭に刻み込んでおく。

 俺の身体も、もはや限界寸前で、それくらい強く意識しておかなければ、途中で止められる自信がなかったからだ。

 

 微かにほころんだ後ろに宛い、クラウドを抱きしめたまま入り口を割った。

「あッ……んああッ!」

 彼の唇から悲鳴がほとばしった。なだめるように口づけ、頬を撫でてやる。

「あっ……あっ……あっ……レ、レオ……ン」

 俺の背に爪が立てられる。

 

 クラウドの反応が落ち着くのを待って、少しずつ身体をすすめる。

 彼の中は熱くて狭い……このまま堪えるのは拷問に等しかった。