『被虐の王子〜尻奴隷の悦楽〜』
 
<1>
 
 KHセフィロス
 

 

「自分で服を脱いで、そこに四つん這いになって」

 耳を疑うようなセリフが私に向かって投げかけられる。

 服を脱いで這えというのか?この私に?

 いかにこれがセックスの一環……ある種のプレイだとしても、到底素直に従えるものではない。

 

 今すぐ、回れ右をして、ジェネシスのマンションから出て行けばいい。

 そうだ、そうすればよい。

 

 頭ではそのように断固として考えるが、なぜか私は、身を覆うシャツを脱ぎ捨て、下着ごとズボンを下ろした。

 大きな鏡に自身の裸身が映っているのを、なんとも奇妙な気分で眺めている。

 生まれたままの姿になった私に、ジェネシスは満足そうな笑みを浮べると、

「さぁ、ここに来て這うんだ。やりやすいように、足を少し広げてね」

 と、ごくあたりまえのように命令した。

 この私に……命じたのである。

「はやく、『セフィロス』。きちんとできないと、入れる量を倍にしてしまうよ」

 どこか徒めいて整った顔で、ジェネシスが私を急かす。

 

 私の足が一歩前に進む。

 ジェネシスの居る場所に。

 

 言われたように彼の前に両手を着き、四つん這いになった。

「足を広げて。そう、奥のつぼみがきちんと見えるように」

 尻に手を掛けられ、ぐいと広げられて、

「あ……」

 と声を漏らした。

「君はまだ慣れないから、痛くないように、準備を念入りにしてあげようね」

 どこまでもやさしくジェネシスが言う。

 彼はあらかじめ準備していた道具の中から、小さな小瓶を取りだして、

「身体がやわらぐ香油だよ」

 と、私に見せた。うす桃色のそれはどこか妖しげに見える。

「さて、入り口にたっぷりと塗り込んであげるからね」

「ひ……いや……」

「嫌じゃないだろう。コレをしないと、嘴先口を挿入するときに痛みを感じてしまうかもしれないよ」

 と彼は言った。

「嘴先……?」

「さぁ、お尻をもっと持ち上げて、俺によく見せるように」

 有無を言わせぬジェネシスの言葉に、私はおずおずと尻を持ち上げて見せた。

 

 

 

 

 

 

 ジェネシスが香油の瓶を取ると、それを私の肛門にたっぷりと垂らした。そのまま、指先で、ゆるゆると撫でる。

「あ……は……あぁ……」

「声が艶めいて来たね。気持ちがいいの?」

 その言葉に私は素直に頷いた。私の後孔は、すでにそういう刺激を快感に変える術を知り尽くしてしまっている。

 

 くぷっ、つぷっ、くちゅっ

 

 ジェネシスのリズミカルな指使いに、思わず腰が動き出してしまう。

 しかし、ジェネシスはそんな私を上から押さえつけた。

「動いたら、上手く緩めてあげられないだろう。おとなしく我慢していなさい」

 命令口調で言われて、私はカッと頬が朱に染まるのを感じた。

 

 じゅぷ、ぐぷっ、ずぷっ

 

 ジェネシスの指が徐々に深く差し込まれていく。

「あッ……あふッ……あぁッ」

「ずいぶんといいようだね。身体が桜色に染まってきて、とても綺麗だよ」

 

 じゅぷっ、ぐしゅ、ぐちゅ……

 

「あ……あぁッ……はぁ……ン!」

 ジェネシスの指が、体内の『その部分』に触れたとき、私は思わず射精してしまった。

 ペニスから発射された白濁は、私の胸をいやらしく汚している。

 ジェネシスが仕方なさそうに、蒸しタオルで、それをぬぐい去り、何事もなかったように、ふたたび尻孔をほぐす作業に戻ったのだ。