『被虐の王子〜尻奴隷の悦楽〜』
 
<2>
 
 KHセフィロス
 

 

「よし、大分ほぐれてきたようだね。これなら管を入れても痛くはないだろう。むしろ気持ちがいいんじゃないかな」

 先ほどから、嘴先だの管だのと何を言っているのか……一度絶頂を極めてしまった私の頭はぼんやりとそんなことを考えていた。

 

「ほら、今度はちゃんと両腕で身体を支えていて。お尻だけ突き上げていると吹き出してしまうかもしれないから」

 ジェネシスは、そういいながら、ひやりと冷たいものを私の尻に当てた。

「ひっ……な、なに……」

「決まっているだろう。今日のお楽しみのためには浣腸をしてあげないと」

 今さら何をいうのかとばかりの口調で、呆れたようにジェネシスが笑った。

「や……やだ……よせ」

「嫌だじゃないでしょ。これでお腹の中の汚い物が全部洗い流されるんだよ。とても気持ちがいいから」

 そういうと、ジェネシスはやわらかくほどけた私の後孔に、ずぷりと浣腸器の嘴先を埋め込んだ。注射器型のそれとは異なり、もっと大量の液が入る瓶と、そこから管がにゅうっと突き出したものである。

「最初は500にしてあげようと思っていたけど、やっぱり1リットル入れてやろう。そうすれば、その反抗的な態度も大人しくなるだろう」

「よせ、やッ……やめッ……」

「ゆっくり入れてあげるよ。そのほうがお仕置きになるからね」

 ジュルリ……ジュルジュル……

 と、彼がポンプを押すたびに、透明な液体が私の体内に入っていく。それが少しずつ腹に溜まっていく感覚のおぞましいこと……

 いったい私が何をしたというのだ。

 そもそも、こんなプレイを私が望んだわけでもない。なぜ、ジェネシスは至極当然のように事を進めているのだ。

 いや、むしろ、なぜ、私は従順に彼に従っているのだろう。仮に争いになったとしても、互角以上に私は戦えるはずだ。こんなふうにあられもない姿をさらして、ジェネシスの為すがままのオモチャでいる必要はない。

 頭では論破のしようもないほどに、おのれの置かれた状況を否定しているのに、身体だけが動かないのだ。それどころか、諾々としてジェネシスのすることを受け入れてしまっている。

 ジュル……ズルズル……

「あッ……はッ……あぁッ……」

 体内と同じくらいの温度に調節してある、浣腸液が徐々に私の腹を満たしてゆく。

 つらさのあまり、ときおり、背から腰に向けて、震えが走るが、それをなだめるようにジェネシスの手が、尻を撫で、膨らんできた下腹をさすってくれる。

 

 

 

 

 

 

「あッ……あぁ……も……ダメ……ダメだ」

「あと少しだよ、頑張って」

 諭すように彼は言った。

「ダメ……だ、出てしまう……」

「あと少し……そうしたら、お漏らししないように、すぐに栓をしてあげるから」

 そういうと、ジェネシスは残りの液をすべて流し込み、孔の入り口をプラグでしっかりとふさいでしまった。

「あっ……あぁッ……」

 がくんと腕の力が抜け、私はその場にみじめに這い蹲ったのだ。

「いいこだね、よくがんばって全部飲み込んだね」

 できのいい生徒を褒めるようにジェネシスが笑い、私の髪をやさしく撫でた。

「ジェ、ジェネシス……栓を外して……」

「まだ出してはだめだよ。ちゃんと腸が蠕動して、中の物がしっかり出るように、あと十分は辛抱して」

「じゅ、十分……?」

 それは私にとって、丸一日ほどの長い時間を意味しているように聞こえた。

「そう十分。お腹をマッサージしてあげようね。それからお尻にもしっかり香油をすり込んで……」

「い、いやだ。早く……お腹……痛い!もう、がまん……できないッ」

「十分だと言っただろう。力を抜いても大丈夫だよ。アナルプラグをはめ込んであるから」

 そういうとジェネシスは、私の尻に残りの香油をゆっくりとすり込みだした。

「ほら、気持ちいいだろう。とてもいい香りだ……お腹がぽっこり膨らんで……ふふ、可愛いね」

「いや……やッ!」

「香油が君の汗と混じって、媚薬の役目を果たすんだ。どうだ、お腹が苦しいだけじゃないだろう?」

 ……確かに、ジェネシスに言われたように、香油を塗られた尻から背には強い快感が突き抜ける。だからといって、排泄への欲求が治まるわけではないのだ。

「ジェ、ジェネシス……おねが……い。も、もう……」

「こんなにペニスを膨らませて、お願いもないだろう?君は浣腸をされてよがっているんだよ」

 やさしく髪を撫でながら、ジェネシスがささやいた。