〜Third conflict〜
 
<3>
 
 スコール・レオンハート<レオン>
 

 

 

 

 

 

俺たちがマーリンの家に到着するなり、ユフィ、エアリスに「遅〜い!」と叱られる。

 

 だが、次に飛んできたのは、聞き覚えのある、ソラの声だった。

「レオンッ! クラウド……ッ!?」

 クラウドを見て少し驚いたように、瞳を見開くソラ。

 明るい茶の髪に、抜けるようなマリンブルーの瞳……クラウドの眸の色とよく似ている。

 相変わらず元気いっぱいの様子に、密かに安堵の吐息をついた。

 

「クラウドッ! すごい、久しぶり!」

 ソラが叫んだ。

 そういえば、彼らが会うのは一年ぶりだと言っていた。

「よう、ソラ! へぇ、デカくなったな、おまえ」

「だろッ? クラウドは変わんないな!」

 思わず吹き出す俺を、クラウドがキツイ蒼の眼でギッとにらむ。

 

「うっせーな、オレはもう大人なんだよ……でも、久しぶりだな、一年……経つか。よかったな、おまえ、捜していた友だちに会えたんだな」

「うん! あ、ふたりに紹介するな。親友のリクだよ」

 『親友』と、本人の前でハッキリ口に出して言えるところが、いかにもソラらしい。

 彼はさきほどから、後ろに立っていた少年を紹介してくれた。

 

「……リクだ。初めまして」

 落ち着いた声音で、そういうと、右手を差し出して彼は静かに微笑んだ。

「クラウドだ、よろしくな」

 握手を交わすクラウド。

「……レオンと呼んでくれ。君のことはずっとソラから聞いていた。こうして逢うことが出来て嬉しく思う」

 俺がそう言うと、リクはアイスブルーの瞳を少しだけ大きく瞠って、差し出した手を握り替えしてきた。

 

 ソラとリク。

 ソラが『動』ならばリクは『静』という印象だ。

 クールなシルバーブルーの髪に、アイスブルーの瞳。肌の色もソラに比べるとずっと白い。もっとも身長はクラウドとほとんど変わらないか、少し高いくらいなので、小柄なソラよりは大分大人びて見える。

  

 この家に入る前、女性たちの嬌声が室内から外に聞こえていたが、おそらくこの美少年をエアリスたちがからかっていたのだろう。

 ソラは目鼻立ちの整った、愛らしい容姿をしているが、まだまだ子どもじみている。それに対して、親友の彼のほうは、抜けるような肌の色、細く筋の通った鼻梁、聡明な目元など、十分年頃の女性の興味を引くパーツを揃えていた。

 そんなことを考えつつ、リクを眺めていると、となりのクラウドが、ガンと足元を蹴りつけてきた。

「……痛ッ……おい、なんだ……?」

「何、じっと見てんのッ?」

「いや……ずいぶんと聡明そうな少年だと思って……」

 率直にそう告げると、クラウドは一挙にカーッ!と顔を真っ赤に染めて、俺をにらみつけてきた。

 ……今度は何だというのだろうか?

 

 だが、幸いにも、女性たちの輪の中に取り込まれた、ソラ&リクには気づかれていない。

 

「あ、ねぇねぇ、クラウド、これ、この前、渡しそこねたヤツ」

 そんな彼の様子におかまいなしに、ユフィがずいずいと書類を押しつける。

「おい、ちょっ……なんでオレなんだよ……」

「だって、ヤリかけでほったらかしてたら、気分悪いでしょーが。今週中ね!!」

 強引なユフィであった。

 クラウドは書類仕事が苦手なのだ。資料読解の仕事を手伝ってくれてはいるが、到底手際がいいとは言い難い。

 

 俺はユフィとクラウドの元を離れると、リクに話しかけた。

 是非に確認しておきたかったことがあったからだ。

 

「……リク、会ったばかりだというのにすまないんだが、早々に見てもらいたい資料や、データがあるんだ」

「俺にできることなら、なんでも協力するよ」

 頷いてそう言ってくれた。シドも意図は察したのだろう。すぐさまコンピュータの前でスタンバイする。

「ありがとう。……ああ、もちろん、少しずつでいいんだ。膨大な情報になるし。こちらから君に尋ねたいこともある」

「ああ。ソラが世話になったようだしな。役に立てれば俺も嬉しい」

「なんだよッ! 子ども扱いすんな、リク!」

 エアリスと楽しそうに話していたにもかかわらず、しっかりとチェックを入れているソラ。大人びたリクの受け答えに抗議する。

「いいだろ。おまえのことだ。本当に世話を掛けまくったんだろうしな」

「バカいうな! おれだってもう大人だぞ!」

「ああ、はいはい」

 軽くいなして、リクはこちらに向き直った。

 

 ……なんとなくソラとリクの関係は、俺とクラウドのそれに似ている。

 ああ、もちろん、俺はリクほども聡明ではないし、こんなふうに軽く受け流す機転も働かないような男だが……

 ……いや、違う。俺とリクよりも、むしろソラのセリフとクラウドのそれが酷似しているのだ。

 

「……で? レオン」

 すぐに言葉を継がなかった俺に、リクのほうから促してくれる。

「あ、いや、すまない。こちら側のデータはまだ整理しきれていないのだが、重要なものはCPに収まっている。……シド」

「おうよ。悪ィな、兄ちゃん。ちょいとこっち見てくれ」

 となりの席を空けて、シドが声をかける。

 リクは言われるがままに、となりに腰掛け、端末に見入った。もちろん俺もすぐに側に寄って、彼らの背後から画面に映るデータの説明を開始した。