〜Third conflict〜
 
<8>
 
 スコール・レオンハート<レオン>
 

 

 

 

「え……ヤ、ヤダよ……そ、そんな格好」

 しどろもどろになって、異議を唱えるクラウド。

「いいから言うとおりにしろ」

 ぐいと腕を取って起きあがらせる。

「わっ……ちょっ……」

「そのまま、腰を上げて……力を抜いたままだぞ」

「ヤ、ヤダったら……あッ……んんッッ……!」

 俺は両手でそこを押し広げ、舌先を使って、奥を広げた。

 自分で見ることも出来ない、最奥を広げられるのはたまらない気持ちなんだろう。だがどうしても行為に必要なことなら仕方がない。彼の身体に傷をつけるのだけは絶対に避けたかった。

 

「んんッ……んッ……! や、やだッ! レ、レオン……!」

「顔、伏せてろ。声が漏れる」

 少し可哀想だったが、そう言った。

「すぐ済むから」

 と宥めるように付け加えてやる。

「んんッ……んぅ……んっ……んっ……」

 枕とシーツに顔を押しつけるクラウド。

 

「んんッ……んっ……んっ……あぅッ……」

 押し殺したような呻きがシーツを伝わって、俺の耳にも入った。

 丹念にそこを刺激し、解いてゆく。

「んんッ……んっ……レオ……ン……もぅ……」

 シーツを掴み閉めるクラウド。関節が白くなるほど強い力で。

 ……うつぶせた耳もとが真っ赤だ。すすり泣くような喘ぎが、俺の下肢をにぶく刺激した。

 

 舌と指を使って、何度も慣らす。

 刺激を与えるたびに、びくびくと反応するクラウドの身体……

 ようやくそこは緩やかにほぐれ、さきほどよりは大分緊張が解けたように思えた。

 だが時間がかかった。クラウドには気の毒なことをしてしまった。

 

「……ッく……ッ……ッく」

 引きつったような泣き声。

 身を伏せたまま震える身体を、背後から覆い被さるように抱きしめる。

 それでも震えが止まらない。よほどつらかったのだろう。多少後悔しつつ、そっと彼の顔を上げるように促す。

 クラウドは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていた。ゲホゲホと噎せたような咳をする。

 声を堪えさせたせいだろう。激しく上下する肩は、呼吸するのも苦しいと訴えていた。

 

「……すまない。可哀想なことをした」

「……はぁっ……はぁっ……」

 ボトボトと涙がシーツに落ちる。

 せわしなく鼓動する胸を、俺はそっと……静かにさすってやった。

 

「……はぁッ……はぁ……はぁ……」

「……大丈夫か?」

 コクンと頷く、クラウド。

 何か……何か……彼に言わなければ……胸の中で暖まっているこの気持ちを……上手く伝えられる言葉……

 

「クラウド……俺はおまえのことが好きだからな……おまえだから……好きなんだ」

「はぁ……はぁ……レ、レオ……ン?」

「すまない……いつも……気の利いたことが言ってやれなくて……だが……俺がこうするのは……おまえだけだ」

「……う……ん……」

 掠れた声でクラウドはつぶやいた。

 パタパタパタと、音を立てて涙がこぼれ落ちた。

 

 彼の呼吸が落ち着いたのを確認し、ゆっくりと身体をすすめる。

 後ろからの姿勢だと、クラウドからは俺が見えない。

 

「あッ……痛ッ……」

「クラウド……大丈夫だ……力を抜け……」

「……んッ……んんッ……あッ……」

 痛みに竦むたびに、動きを止め、彼の耳元に口づけ胸元をさすり、身体を密着させて安心させてやる。

 相変わらず狭くて熱いクラウドの内側。

 油断すると自分の肉体が暴走しそうで気が抜けない。

 

 彼の腕は、もう自分の身体を支えることさえ出来ない。

 動きに合わせて、為されるがままだ。

 

 まるで一方的に欲求を満たすような交わりは、俺の本意ではなかった。

 耳元に口を寄せ、「クラウド……」と彼の名を呼ぶ。そのまま抱きしめると、ゆっくりと彼の身体を起こした。

 

「……んッ……あッ……ダ、ダメだよッ! こ、声……ッ!」

 うつ伏せたままなら、顔を塞いでいられるが、抱き上げられた座位の形だと覆えるものがなくなってしまう。

 動きにくい形だが、俺がゆっくりと腰を揺すると、切羽詰まった悲鳴が上がる。

 

「んっ……あッ……あぁッ……レ、レオ……ン! ……も、もぅ……ッ!」

 抱きしめている俺の腕に爪を立てる。

 仰け反る頬に顔を寄せ、涙でぐしょぐしょになった、紅い頬に……唇に顎に、口づけを繰り返す。

「……んッ!……んんッ! んぁッ……!!」

「クラウド、すまん……ッ」

 腹の上で踊る彼の肉体が、ビクビクと震え、背が弓なりに仰け反ったとき、抱きしめながら謝罪し、俺は彼の口を左手で塞いだ。

「んんッ……ンンンッッ!! ンンーッ!!」

 

 彼が腕の中で達したと同時に、俺も激しい絶頂感に襲われた。

 目の前が真っ白になるような解放を味わい……俺はそのままクラウドを抱きしめていた。

 

 ゼッゼッという、痛々しい吐息が収まるまで、宥めるように胸を撫で、金の髪に口づけを続けたのであった……