〜Third conflict〜
 
<15>
 
 スコール・レオンハート<レオン>
 

 

 

 

 

 

 

 リクを私室に案内し(とはいっても、昨夜はこの部屋で休んでもらったわけだから勝手知ったる、であろうが)、PCデスクの前に座らせる。

 城のメインPCからダウンロードしてきたデータを画面に呼び出し、同時にアウトプットしたものを広げてみせる。

 

「ほら、ここの部分だ……アンセムの……」

「ああ、なるほど……」

 リクは小さく頷いた。 

「そうか……」

 そのまま黙り込み、思案顔をする。

「……リク?」

「あ、いや、すまない。ちょっと…… いや、やっぱり資料を全部読ませてもらってから話をしよう。その方がいいと思う」     、

 書類から顔を上げ、わざわざ俺を見ると、はっきりとした口調でそう告げた。

 

「……そうか。いや、おまえがいいと思うようにしてくれ。信用している」

「……ずっと年下のガキをか?」

「おまえは子どもじゃない。……年齢は関係ないと感じている」

「そうか」

 そう応えると、彼は整った面差しを柔和に崩し、クスッと小さく笑った。

 

「じゃ、俺は居間にいるから。なにかあったら声をかけてくれ」

「気にしなくて良いのに」

「いや、側に人が居ると気が散るだろう。ま、ちょっとソラの相手もしてやらないとな。クラウドが引きこもっているから」

 苦笑しつつ俺がそう答えると、リクは形の良い眉を「八」の字に下げ、

「苦労するな、レオン」

 と宣ったのであった。

 

 17、8才の少年に同情されている我が身が、いささか情けない気がしなくもないが、これもまぁ、俺の性なのだろう。

 居間に戻ると、ひどく退屈そうな様子でソラがソファに転がっていた。

 

 

 

 

「レオン、退屈〜」

 などと、ハッキリ言ってくれる。

「おまえな……だったら、ちょっとは資料の読解手伝ってくれ」

「え〜……おれさァ……なんかこうデスクワークってダメみたい。ここら辺がムズムズしてくんの」

 苦虫を噛みつぶしたような面もちで、胸元を叩きソラがつぶやいた。こんなところはクラウドそっくりだ。髪型のせいもあるのかもしれないが、たまにクラウドとソラが本当の兄弟のように見えてしまうことがある。

 ふて腐れ方も似ているし、かまって欲しいときのリアクションもそっくりだ。ボディコミュニケーションが好きなのも共通点であり、今、こうしているときでさえ、ソラはにじにじと向かいのソファに座った俺に飛びかかろうと狙っている。

 ……子どもがよくやるプロレスごっこというヤツだ。

 

 ぴょんと飛びかかってくるソラを、難なくかわし、その拍子にソファから転げ落ちそうになった小柄な身体を引き上げてやる。

「ちぇ〜ッ! レオン、反射神経いいなぁ」

「あたりまえだ。一応剣士なんだぞ」

「おれだってそうだもん」

「……その言い方」

 俺は思わず指摘していた。あまりにそっくりだったので。

「なんだよ」

「クラウドそっくりだ。本当におまえたちはよく似ているな」

「そうかぁ? あ〜、でも、そうかも。おれ、けっこうクラウドの考えてることわかるもん。クラウドと一緒に遊ぶの楽しいしね」

「そうか」

「うん、レオンは年上って思うけど、クラウドはあんまりそーゆーの感じない」

 ズバリと言ってのけるソラであった。

 クラウドが耳にしたら、さすがに落ち込むところであろう。

 

「やれやれ、俺はリクと話が合いそうだよ。なんというか……安心して会話できる」

「何それ。まるでおれが子どもみたいじゃないか」

「そういうことだ。クラウドによく似ているんだからな。子どもだろ」

「あーッ! 後で言いつけてやろッ!」

 キャッキャッ!と笑いながら、じゃれついてくるソラ。

 ああ、こんな弟が居たら、クラウドもまた違っていたのかも知れない。

 

「な、ところで……ちょっと聞きたいことがあるんだが……」

 俺はソラの華奢な腕を取って、引っ張り上げるとそう切り出した。じゃれ回ってソファの上に寝ころぶ形になっていたのだ。

「イテテテ!腕抜けるって」

「ほら、ちゃんと座れ。おまえに聞きたいことがあるんだ、ソラ」

「なに?」

 あどけない表情で訊ねる。クラウドによく似たブルーの瞳が大きく見開かれる。

 俺はさりげなく周囲に注意を払うと、ちらりとクラウドの部屋へ続く扉の方を眺めやった。

 ……大丈夫だ。あの後ちゃんとベッドに潜り込んだのを確認したし、リクは俺の部屋で資料に没頭している。

 

「……ソラ。『セフィロス』を……知っているだろう?」

「うん」

 拍子抜けするほどあっさりと彼は頷いた。

「どういう経緯で知り合ったんだ?」

 俺は訊ねた。

「知り合った、とかじゃないよ。前にクラウドに言われてたんだ。『セフィロスに会ったら教えてくれ』って。特徴を聞いてたからさ」

「そうか……」

「うん、ホロウバスティオンに着いてすぐ見かけたんだ。クラウドの言っていたとおりの人物だったから」

「…………」

「長い銀髪、長い刀って」

「……なるほど」

「うん。それで、声掛けたんだ。やっぱ確認するべきだと思ったし。あ、でも、おれ、名前訊ねただけだぞ?」

 心外そうに、ソラは言った。