うらしまクラウド
〜クラウド in ホロウバスティオン〜
<15>
〜帰還〜
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

 

 ……セフィロスのやさしい手……温かい胸……

 なつかしい香り……銀の髪のつややかな感触……

 

 ……セフィロス……セフィロス……

 大好きだった。

 すごくすごく憧れてた。

 ……今でも……たぶん憧憬の念は強く残っているんだと思う。

 ……まだ怖くて……あなたには会えそうもないけど……でも、オレ……

 ……オレにとって、あなたは特別だった……ううん、今でもそうなんだと思う……

 

 ……レオン……会いたいなぁ……

 ……もしかして、もう二度と会えないのかな……

 

 レオンはオレが居なくなったらどうするのかな。

 ううん、レオンはきっと何も変わらないよね。

 オレと出逢う前に戻るだけだもん。

 

 ……でも、ちょっとは泣いてくれるのかな。

 寂しいと思ってくれるかなぁ。

  

 もし、このまま二度と会えなくなったら……ああ、ダメだよ、考えただけで……オレ……情けないけど涙出てくるよ。

 オレ、レオンのことが好きだもん……本当にレオンが好き。

 レオン、いなくなったら寂しくて死んじゃう。

 セフィロス、側に居てくれるって言ったけど、こっちのセフィロスにだって、好きな人、いるかもしれない。オレが可哀想だったから、なぐさめてくれただけなのかも。

 

 ……レオン……

 ……レオン……

 

 大好き、レオン。

 ごめん、オレ、最期までワガママ言って。あの朝、ちゃんとサラダのピーマン食べればよかった。くだらないことで怒ったりなんてしなきゃよかった。

 ……オレが無茶なこと言っても、レオン、うんうんって……頷くじゃん。ぜったい怒ったりしないもんね。オレ、それわかっててワガママ言ってる。

 レオンが、オレの言ってること、ちゃんと聞いてくれてるの、確認したくて。

 レオンが、やさしくしてくれるとこ、ちゃんと見たくて。

 

 ……もしかしたらバチが当たったのかもしれないね。こんなに逢いたいって思ってるのに、全然帰り方、わからないもの。

 

 

 

 

 ごめんね、レオン。いつもいつもごめんなさい。

 アンタのこと、好きだから……大好きだから……

 

(……クラウド)

 うん、アンタの低い声も好き。

 たまに聞き取れないこと、あるけど、それでもすごく落ち着くの。

 

(……クラウド……!)

 焦げ茶色した、サラサラの髪も、ブルーグレイの瞳も、すっごく好き。オレみたいにキツイ色合いじゃないのが、本当にレオンに、よく似合っていて……

 

「おい、クラウド……!」

 耳元でそんな風に呼ばれたら吃驚しちゃうよ、レオン。

「クラウド……! クラウドッ!」

「…………」

「クラウド……? 『クラウド』……だろう?」

「……え?」

 自分の口からこぼれ落ちた疑問符を、オレは他人事のように聞いていた。

 

「…………」

 口を開いてみるが言葉が出てこない。

「クラウド……!」

「……うそ……」

 ようやく口にした言葉も、ひどく情けないつぶやきになった。

 

「……クラウド!しっかりしろ、クラウド!」

 レオンがオレの名を呼んだ。

 ここ……どこ?

  

 見慣れたオーク色の床……素朴な木目調の壁……

 なぜかオレは、毛布にくるまり壁に寄りかかるような格好で座り込んでいた。その足下には空のコップが転がっている。

「…………」

「……クラウド、しっかりしろ!」

「…………」

「どこか痛いところはあるか? 具合が悪いのか?」

 目の前の『彼』は、がっしとオレの肩を抱くと、噛んで含むように確認した。

 

「……うそ……レオン?」

 ぼんやりと見開いた瞳に映る、整った顔……

 額の傷に、濃い茶色の前髪が下り、ブルーグレイのやさしい眼差しがオレを見つめている。

「そうだ。……よかった……」

「……レオン……なの? ホント……?」

「ああ、おまえがオレのところに戻ってくるよう……祈った。どうしてもここに連れ戻したかった」

 レオンの低い声が、耳元に響く。

 それは聞いたこともないような、苦しげな物言いで……戻って来れたと喜びたいところなのに、レオンの様子のほうが心配になってしまうほど、切なげな口調だった。