真夏の夜の夢<43>
 
 
 土浦 梁太郎
 

 

 

俺たちの遭難事件は星奏学園側としては、とんでもない大不祥事であったのだろう。

 

 その日の翌朝、俺たちはバラバラというひどく機械的な音に目を覚まさせられた。

「なんだ……いったい……」

 低血圧の月森がつらそうに、こめかみを押さえる。

 俺はすぐさまそいつがヘリコプターのモバリング音だと気付いた。

 なかなか起き上がれない月森をそのままに、すぐさま表に飛び出す。

 穴ぐらから出て行くと、その音はより一層激しいものになった。

 

 バラバラバラ…………

 

 ジージーというくぐもった機械音は無線の音だろう。

 

「おーい! ここだ! ここだ〜ッ!」

 両手を大きく広げて振り回す。

 いや、このポジションだと岩の影に隠れて見えにくいか。

 俺はそのまま、大岩に足をかけてその上に飛び乗った。

 

「うお〜い! ここだここだーッ! おーいおーい!」

 

 ジジー、ジジー。

『目標確認、目標確認しました』

 

 おおぉッ! 本当にこんな風にアナウンスするもんなんだ!

 ヘリは一機だけではないらしい。まだ、煤煙のけぶる中、なんとか必死に俺たちを見つけ出そうとしてくれている。

 

『目標確認、旋回します!』

 そのアナウンスを聞いてから、俺は即座に月森のところへとって返した。

 

 

 

 

 

 

 ……その後、俺と月森は無事回収され、麓の病院に収監された。

 いやはやまさしく収監だ。

 別にたいした怪我をしているわけではなく、ちょっと薄汚れているだけなのにだ。

 

 おふくろと姉貴が現地入りしているせいで、なんやかんやといらぬ世話を焼かれ、致し方なくベッドに横になっている。

 ……しかし、おふくろに泣かれたのは参った。

 あの気丈な姉貴に、涙目で抱きつかれて、俺はようやくコトの重大さを噛みしめたという気分だった。

 

 月森のところには家政婦さんが迎えに来ていた。

 父親も母親も海外で仕事をしているため、すぐに戻ってくることはできないらしい。

 それも仕方がないこと……とはわかっていても、淡々とした月森の態度を見ていると胸が苦しくなる。

 

 『こんなことは慣れっ子だ』というふうに……

 

 救いだったのは、先に救助されていた他のみんなが同じ病院にとどまっていてくれたことだった。もっとも女子ふたりは先に家に帰されたようだったが、それも当然のことだろう。

 野郎どもだって、大なり小なりの負傷をしてはいたはずだが、家に帰れないほどの大怪我をした者はいなかった。だが、捜索が為されている間中、療養と称して地元の病院で俺たちの帰りを待ってくれていた。