Day after tomorrow
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<5>
 
 セフィロス
 

 

   

「……なんで、ここは真っ昼間から花火が上がってんだ」

 オレのつぶやきを完全に黙殺して、ガキどものテンションは留まるところを知らない。

 最寄り駅からゴールドソーサーへのゴンドラに乗ると、はしゃぎ回って窓から身を乗り出す勢いだ。

「すご~い、こんなほうまで音楽聞こえてくる!」

「あ、ほら、カダ、花火が上がったぞ。綺麗だな、ピンク色だ」

「ねぇねぇ、兄さん、チョコボレースのコースってまだ見えないの?俺、近くで見たい!」

「おい、おまえまで身を乗り出すなよ、ロッズ。ゴンドラが揺れるだろ。まだまだもっとゴールドソーサーに近づかないと」

「だんだん遊園地が見えてきたね。昼間でも華やかにライトアップしているんだなぁ」

 感心したようにイロケムシがつぶやいた。

「ああ、だが、夜はまた格別だ。とても幻想的で……」

 それにヴィンセントが応える。

「なぁ、ヴィンセント、ジェットコースター乗る?それとも最初はマウンテンバイクとか?あ、ゴーカートもいいよな。あの不思議の国を旅できるヤツ」

「あ、あの……わ、私はあまりスピードの出るものは……その……」

「大丈夫だって、俺も一緒に乗るんだから!前に仲間連中とで来たときは、乗り物ほとんど乗れなかったもんね。今回は堪能しないと!」

 相変わらずガキのようにクラウドが言う。

「ねぇねぇ、兄さん、この体験プレイスってさぁ」

 末のガキが、ご丁寧にパソコンでダウンロードしてきたという園内マップを広げて問いかける。

 すでに何から制覇するか決めているらしい。

「いいか、カダ。園内に入っても単独行動はダメだぞ。俺たちも乗り物に乗りたいんだから、みんな一緒にな」

「わかってるよ、ヤズー。でも今日中にいくつ乗れるかなぁ。平日だし、あんまし混んでないといいんだけど」

「二泊する予定なのだから……そんなに慌てなくても大丈夫だろう?」

 苦笑しつつ、ヴィンセントがささやいた。

「だってぇ、気に入ったヤツは何度でも乗りたいもん。スプラッシュマウンテン楽しみだなぁ~」

「……カダージュがすっかり元気になってよかった。山田先生に、一度きちんと、お礼を言いに行かなければならないな」

 そう言って末子の髪を撫でる。ヤズーはもちろんだが、ヴィンセントも一月の間、献身的にカダージュの世話をしていたのだ。完治して感慨もひとしおというところなのだろう。

 

 

 

 

 

 

「やったぁ!入り口だ!う~、わくわくする」

「騒いでいると転けるぞ。ほら、さっさと降りろ、ガキども」

 騒々しい銀髪と金髪を先に下ろしてから、ヴィンセントがゆっくりと足を踏み出す。ゴールドパスがあるので、三人分は無料だが、残りの人数分は支払わなければならない。

 ホテルから出る気が皆無のオレとしては、無駄金だと思う。

 

「……おい、二泊三日など、ずいぶんと家計に響くんじゃないのか?」

 ヴィンセントに耳打ちすると、彼は

「大丈夫」

 と請け合った。

「ちゃんと日々貯蓄もしているし……今回のような家族のイベントで使う費用ならば、無駄なお金ではない」

 まるでオレの内心を見透かしたようなセリフを吐いた。

 

 受付嬢から、全員フリーパスをもらい、まずは荷物を置きに、ホテルに向う。

 もちろんミステリーエリアのゴーストホテルだ。

 ご丁寧にわざわざ予約をしたらしい。

 最上階の部屋に着くと、ガキどもは荷物をほっぽり出し、すぐさま遊びに行こうと飛び出して行く。

 

「ああ、ほらほら、勝手に行ってはダメだぞ。カダもロッズも一休みしてからにしろ」

 ヤズーが備え付けの茶器で準備をしようとするが、カダージュがもどかしげに叫ぶ。

「お茶なんて外で飲めばいいじゃん!早く早く!今日中に行きたいスペースもあるんだから」

「仕方がないな。ヴィンセントと兄さんはどうする?もう行く?」

 袖口を引っ張られながら、イロケムシが訊ねるが、ヴィンセントは苦笑しつつ、

「後から、クラウドたちと行く。先に行ってくれたまえ、ヤズー。携帯の電源は入れておいて欲しい」

 と言った。

「うん、それはもちろん。じゃあ、仕方ないから先に行ってるね」

「ヤズーってば~!」

「はいはい、わかったよ。さぁ、行こう」

 仕方なさそうに吐息し、ヤズーの姿も弟たちの後についで見えなくなった。