Day after tomorrow
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<8>
 
 セフィロス
 

 

   

 ホテルもあることから防音上の施設設備の都合で、アトラクションは24時で終了だ。

 オレとヴィンセントがゴンドラ乗り場に着いたのは、その三十分前だった。

 予想通りというべきかどうか、案の定、乗り場には人の列などなく、切符切りが眠そうにあくびを噛み殺していた。

 その場に歩み寄ると、すぐに到着したハコに、乗せてくれる。

 昼間と変わらない、妙に陽気な音楽の中、ゆっくりとゴンドラは空へ浮いた。

 

「……よかった。待つことなくすぐに乗れて」

 ヴィンセントが言った。

「この時間じゃあたりまえだろ」

「ふふ、君とふたりでこの場所に来たのは、そう前の話でもないのに……」

 きらめくネオンに目線を泳がせながら、ヴィンセントが静かにしゃべる。最初会った頃は、低くてぼそぼそしゃべるもので、ひどく聞き取りにくく感じたものだ。

 だが、今では大分慣れた。他の連中も、ヴィンセントが口を聞くと黙って耳を傾けるのだから。

「おい、寒くないのか。一周したら帰るんだぞ」

 そう言って腕を組んで座ったオレに、ヤツは微笑みかける。

「セフィロス……」

「何だ、早く言え」

「……私に……いや、私たちに隠していることがあるだろう」

「……何のことだ」

 挑むように聞き返したオレに、相変わらず笑みの表情を崩さない。

「君は時に気遣いが過ぎる。……ネロたちのことだ。あの地下室が崩落した後の話……神羅の者たちから報告を受けているのだろう?」

「…………」

「私も気になっていたのだ。……話してくれたまえ」

 表向きは動揺をあらわさず、彼はささやくようにそうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

「……ネロのこと?オレが何を隠しているって?」

 そう訊ね返した。

「君が私の精神状態を気にして、あれからの話をしないようにしているのには気付いていた。しかし、事の次第に進展があれば教えてほしいのだ」

「…………」

「セフィロス……?」

「ふぅ……別に隠してなどいない。大した話がないからしていないだけだ」

 これはウソではなかった。

 わざわざヴィンセントらに語ってきかせたい話が見当たらなかった。

「まぁいいだろう。言っておくが、聞いてて楽しい話はないぞ」

 そう前置きをして口を開く。

 ここまで訊ねられて、隠しておくのもよけいな気を回されると判断したからだ。

 

「……今はまだ、地下通路の掘り起こしをしている段階だ。先日、ようやくDGどもの巣くっていた、地下ホールまで掘削が進んだらしい」

「ち、地下の広場まで……」

「そうだ。大量に連中の死骸が見つかったそうだが、まだネロたちのいた本部までたどり着いていないそうだ」

「…………」

「よって、ネロとヴァイスの死骸はまだ発見されていない」

「そうか……」

 そうつぶやくなり、ヴィンセントは難しい顔をして黙り込んだ。

「おい、よけいなことを考えるなよ。それに取り越し苦労をするな」

「……え」

「あの状況で天井が崩落したんだ。ヴァイスはもちろん、ネロもおだぶつだろうよ」

「そう……だな」

 ヴィンセントがゆっくりと頷く。

「おまえは連中に同情の余地があったろうからな。敢えて死んだであろうことにまで言及しなかったんだ」

「いや……その……私は……」

「野郎どももDGソルジャーだ。神羅の被害者であろうことには違いない」

 そう言ったオレをヴィンセントは悲しそうな眼差しで見つめた。

「だが、先の一件であの連中は死んだんだ。ようやく眠りにつけた。……仕方がなかったことだと思え」

 無茶かと思ったが、オレはヤツにそう言って聞かせた。