〜 美女でも野獣 〜
〜 FF7 〜
<4>
第二部
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

「な、ヴィンセント。おまえの事情を聞き出そうなんざ思っちゃいねェ。ただし、ひとりで姿を消すってのはァ、無しだぜ?」

「おい、シド、たばこ消せよ! ヴィンセントの身体に障るだろ!」

「チッ、うっせーな! ま、あのうるさいリーダーもアンタのこととなると、目の色代えて、必死になる。みんな、オメーのこと仲間だと思ってるんだ。だから、あまりくよくよ悩むな」

 あくまでも偉そうにシドが言った。

 いつの間にか室内に揃った、他の連中も一様に頷き返す。

 ヴィンセントは、戸惑った様子で俺たちを眺めていたが、喉元を押さえ苦しげにつぶやいた。

「……皆の気持ちは……嬉しい。本当にありがたいと思っている」

「それなら、出て行くとかは言いっこなし! それでいいな? ヴィンセント」

「ク、クラウド……話したように、リミットブレイク時は、本当に危険なのだ。おまえは私に自我が残っていると言ってくれたが……その自信もない。ブレイクには段階があって、四種に変化する。私はもはや『人』ではないのだ」

 そこまでいうと、彼はハァハァと荒い吐息を繰り返した。傷の痛みではなく、精神的な緊張のせいだろう。できることなら、もっとゆっくり休んでから話をしたかったのだが、そう促しても彼は受け付けまい。

「ヴィンセント……そんなこと言ったら、魔晄の光を浴びた俺だって、人間離れしてる部分があるはずだよ? エアリスだって、『古代種』って言われてるし、ナナキはそもそも種族が違う。でも、そんなこと、当人も他の仲間も何とも思ってないじゃんか」

 そう言って慰めても、彼は力なく頭を振った。

「意味合いが異なる……私の肉体は呪われている。そう……やはり隠しおおせるはずもない。そもそも同行を誘われたときに、きちんと打ち明けるべきだったのだ」

「ヴィンセント?」

「……皆も聞いて欲しい」

 静かに言うと、彼は顔を上げた。ベッドのクッションから起き上がらせた背中に、腕を回して支える。

 細くて薄い背の感触が、今のヴィンセントの姿と相まって、ひどく痛々しく感じられた。

 

 そして彼は語ってくれたのだ。

 ……彼の身体の秘密を……

 ルクレッツィアという女性と、セフィロスのこと……

 そして、宝条博士の悪魔の所行を……

 

 

 

 

 

 

「……死にかけた私の肉体に、宝条が細工をしたのだ。ほんの実験のようなものだったのだろう。……そもそも、瀕死の状態だったのだからな」

「ひでェ……」

 バレットが呆然とつぶやいた。

 シドは火の付いていない新しいたばこを、ガジガジと噛んだ。

「幸運にもというべきか、私はそのまま神羅屋敷の地下で永らえた。もう五十年は経つだろうか…… そして、クラウド」

 傍らに寄り添う俺に、目線を投げかけ、

「……おまえが……私の目覚めを促したのだ」

 と、ささやいた。

 恨みがましい物言いでもなく、目覚めの喜びを湛えているわけでもなく、淡々と現実を受け入れている瞳であった。

「じゃ、じゃあ、ヴィンセントって、少なくとも五十才以上!? シドとかより年上なワケ!?」

「おい、ユフィ!」

 彼女の不躾な物言いを、鋭く遮った俺に、ヴィンセントはいっそ笑みさえ浮かべて、

「かまわない……」

 とささやいた。

「よいのだ、クラウド。本当のことなのだから。この姿のまま……私はもう五十年ちかく生き永らえている」

「とても……信じられないわ、そんなに……。ヴィンセントって、男の人なのに、すごく綺麗で……戦闘のときは、強くて……」

 ティファが独り言のようにつぶやいた。だが、彼女の傍らに立つエアリスは、微かに首を傾けて、

「そうかなァ?」

 と言った。

「エアリス?」

「だって、ティファ。ヴィンセントって、あまり年齢を感じさせない、不思議な雰囲気があるよね。美青年なのに、妙にお年寄りっぽくお小言いったりして。なんか、そういうことも全部ひっくるめて、『ヴィンセント』って感じで、私は好きだなぁ。年のことは気にならないよ」

 エアリスの言葉は、ヴィンセントの実年齢のことで、少なからず衝撃を受けていた俺の心をもやわらげてくれた。

 そうだ。

 彼の持つ、不可思議でやわらかな雰囲気は、きっとそういった事情が関係しているのだと思う。姿の変わらぬまま、時の流れを経てきた旅人のような……切なく哀しい……そして、甘やかな空気。

 俺が惹かれたのも、容姿だけではなく、そういった彼の纏うオーラのようなものだと感じる。