〜 美女でも野獣 〜
〜 FF7 〜
<6>
第二部
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 なんて言えばいい?

 そのまま告げても大丈夫だろうか?

 正確に理解してもらえるだろうか?

 よりにもよって、こんなときに、告白するなんて……卑怯だろうか?

 

 様々な思いが頭の中を駆け巡る。

 いきなり黙り込んだ俺を、ヴィンセントの紅い瞳が見つめている。

 少し困惑したふうに首を傾げ、寝台の背に寄りかかったまま、虚ろな眼差しを向ける彼は、ネジの切れたカラクリ人形のように見えた。

 夜着のサイズは、彼の身長に合ったものだが、襟周りから胸元は大分余裕がある。 

 生成の生地から、それよりもずっと白い首が覗き、胸の辺りまで見えてしまいそうだ。

 袖口からは骨張った手首が覗いているが、あまり男性的な印象はない。細くて華奢な指だが、関節が張ってはいないからだろう。

 

 そういえば、神羅に入社したばかりの頃、初めて中庭でセフィロスに出逢った。

 彼の載った新聞記事や雑誌を集めるのは、ほぼ日課となっていたので、彼の容姿については熟知していたつもりだった。

 だが、本物を間近で見て、言葉を失ったのだ。

 この世の中に、ここまで綺麗な人がいるのかと……

 

 今、目の前にいる人物は、美貌のベクトルはセフィロスとは異なるけど、ほぼ同等の美しさ……いや、顔だけでなく、容姿でいうのなら、セフィロス以上の『佳人』というべきなのだろう。

 乱暴に扱ったら、あっと言う間に壊れてしまいそうなほど、脆く儚げな……

 ああ、俺には文才がないから。

 ヴィンセントをどんなふうに、形容すれば、その人離れした姿形が伝わるのかがわからない。

 ガラス細工の人形……とでも言っておけばいいだろうか。

 そういった、『危うさ』『脆さ』というのは、セフィロスには無かった要素だ。

 

「……クラウド? どうした」

「え? あ、ああ……ごめん」

「いや……謝る必要はない。ただ……急に黙り込んでしまったから……」

 いけない!

 ただでさえ、今のヴィンセントは、リミットブレイクの件で神経質になっている。沈黙の時間を、悪い方へ悪い方へと捉えてしまう。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、考え事してた。自分自身への確認作業」

 あえて茶化したふうにそう告げた。

 むしろ、自分の気持ちに蓋をして、言葉がでない状況に陥るほうがよくない。

 体力的にも精神的にも、不安定な状態にあるヴィンセントに、おのれの感情を押しつけるのは好ましくないだろうが、この感情は、セフィロスの時と違って、完全に俺の一方通行なのだという自覚はある。

 だから、俺の告白によって、ヴィンセントが傷つくことはない。

 

 やや言い訳がましいが、この間、わずか数秒にて、その結論に達したのだ。

 

「クラウド……?」

「……ヴィンセント、その……聞いて欲しいことがあるんだ」

「……なんだろうか?」

「あのね、俺、もうこれ以上、黙っていられそうもないから言わせてもらう」

 立ち上がりかけた椅子に座り直し、ヴィンセントの紅の双眸に、ひたりと目線を合わせる。

「あ、ああ。その……なんだ? 私が……何か……」

 違う!そんな風に、身を引かないでくれ!

 ああ、そうか。俺の言い方も良くなかった。

 『黙っていられそうもないから言わせてもらう』というフレーズは、受け取りようによっては、苦情の前置きにさえ聞こえてしまうではないか。

 もう、こうなったら、直球で行くしかない。

 そう、かつて、セフィロスが、子供の頃の俺に言ってくれたように。

 

「……ヴィンセント。俺、ヴィンセントのことが好きだ」

 俺はあくまでも真剣であったが、彼はすぐに真意が読み取れなかったのだろう。

 言葉を発することなく、こちらを改めて見直す。

 紅い瞳の中を覗き込めば、ぼんやりとクエスチョンマークが見取れたのかもしれない。

「特別な意味合いで、『好き』なんだ。いきなりこんなこと言われて迷惑かもしれないけど、もう自分の気持ちをごまかしきれそうにない」

「え……?」

 さすがに今度は意味が通じた。

 『目を瞠る』ヴィンセントというのは、なかなかめずらしい見せ物ではあるが、さすがに告白のシーンなのである。その様子を観察して楽しむ余裕はなかった。

「あ、あの……?」

「……セフィロスのこと、俺、本当に好きだった。まだ……少しだけ胸が苦しい。でも、今はもう、あの炎に包まれた夜みたいな、切ない気持ちにはならないんだ」

 ゆっくりと言葉を選びながら、話を続ける。