〜 美女でも野獣 〜
〜 FF7 〜
<14>
第二部
 バレット
 

 

 

 

「時間がないんだ、聞き分けてくれ、ティファ……ッ!」

「だって……今から黒マテリアを探すって…… 無理に決まってるじゃない!この広い神殿のどこにあるっていうの? よしんば見つかったとしても、とっくにあなたもクラウドも殺されてるわ……ッ!」

 ヒステリー寸前のティファの声に、俺とレノは顔を見合わせた。

 さすがにふたりでは心許ない、クラウドかヴィンセントたちのチームと合流しようと歩いていたのだが、思いの他、側近くを移動していたらしい。

 

「もう時間がないんだ。私が行かなければ、クラウドが殺される。なんとかごまかして時間をかせぐから……」

「相手は狂人なのよ? 黒マテリアを持っていないとわかったら、あなたのほうから殺されるわ!」

「おぅい!ちっと落ち着けって!」

「バ、バレット!!」

 皆の声が合わさって、俺の方に向けられる。一緒にいるレノも注目されるが、こいつらもいわゆるパニック状態ってヤツで、咎めたてられることはなかった。

 

「黒マテリアはこの西通路地下の祭壇にあるらしい。とはいっても、祭壇がどの部屋かはわかんねーんだが」

 簡単にこちらの状況を説明した後、即座に訊ねられたのは、黒マテリアの安置場所であった。

「本当か、バレット……! 時間がないんだ……!」

 必死の形相でヴィンセントが縋り付いてきた。

「こいつがいうにはそうなんだよ。さっき話した都市計画部長とかいう野郎なら細かいことまでわかるんだろうが、今はその話を信じるしかないだろ」

「ひでぇ言われようだな。黒マテリアについては、確かにこの神殿の祭壇に安置されているはずだ。だが、オレらは着くなり、セフィロスにやられたからな。とっくに奪われたもんだと思ったぜ」

「レノ……くん、だったな。セフィロスは祭壇の場所を知らないのだと思う。彼は我らが神羅と組んでいるのだと断定してきた。それゆえ、黒マテリアを持っていると……」

 ヴィンセントが場違いにも「くん」  付けで、レノのヤツを呼んだ。

 それに気を良くしてではないと思うが、

レノはその問いかけにすぐに応えた。

「そうッスか…… まぁ、元はクラウドも神羅の人間だし、オレらとも知り合いでしたしね。どっかでつながってるって思われても不思議じゃないッスね。……おまけに……」

 そこまでいうと、レノは言葉を切って、じっと何かを見つめた。

 仲間の誰かかと思ったが、確認する前にフイと顔を背けた。

「後、五分しか時間がない。私は黒マテリアを持って、セフィロスのところへ行かなければならない……!」

「えぇぇ! 後、五分ってちょっと…… さすがにそれは無理だぞ、と!」

「わかっている…… だが、そうしなければクラウドが……! 私は君の話を信じる! いや、もはやそれしか頼みはないのだ。私の仲間たちと黒マテリアをとってきてくれ。クラウドを助けてくれ……!」

「は、はい」

 レノが頷くのを確認すると、ヴィンセントはぎゅっとその手を握りしめた。相手がたじろぐのなんざおかまいなしだ。

「ありがとう、レノ……くん。私はセフィロスを説得してみる。クラウドだとてそのつもりで一人で行ったんだ。やれるだけのことはやってみる」

 きびすを返すと同時に、紅のマントが翻る。

 その場所にはもう、ヴィンセントの姿はなかった。

「な……何なんだ……あの人……」

 惚けたようにレノがつぶやいた。

「最近、仲間になった変わり者だよ。あいつの作るメシはうめーぞ」

 シドの言葉に、レノはハハハと力のない笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

 

「……だがよ、黒マテリアが見つかったとしてもよ……本当にセフィロスの野郎に渡しちまっていいのかよ」

 祭壇への道は地下だ。

 気は急くが蝋燭の炎なしには進めない。

 足早に……だが、慎重に進んでいる最中に、シドが低くつぶやいた。

「シド……! クラウドとヴィンセントの命がかかっているのよ」

 せっぱ詰まった声はティファだ。

「いや、別に俺ァ、そういうつもりで言ったんじゃ……」

「そこのオッサンのいうことはもっともだぜ、ティファ」

 割って入ったのは意外にもレノのヤツだった。

「……ここで黒マテリアを見つけて、セフィロスに渡したって、結果は在る意味同じだ。人類は、メテオによって滅ぼされる。クラウドたちが先に死ぬか後に死ぬかだけの違いだぞ、と」

「勝手なことを言わないでレノ。仮に黒マテリアが一時的にセフィロスのものになっても、後から奪い返すわ。絶対にクラウドを殺させたりしない」

「やれやれ、気の強いのは相変わらずだぞ、と。(ルードのヤツ、いったいこの女のどこがいいんだか。乳はデケーが)」

「何か言った?レノ」

「いや、なんでもないぞ、と」

 と、タークス野郎はごまかした。

 地獄耳のバレットさまにはしっかり聞こえているわけだが。

 

 ユフィがいないから、必然的に静かになるのはわかるのだが、神殿に入ってから、エアリスとケット・シーが、ほとんど口を聞いていないのが、少しだけ気になった。