〜 美女でも野獣 〜
〜 FF7 〜
<17>
第二部
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

合金で出来た手甲がギィギィと耳障りな音を立てる。

 もともと力を込めていなかったのだろう。セフィロスの刀はそれほど重くはなかった。

 

「ヴィンセント……ッ!」

 悲鳴のようにクラウドが叫んだ。

「や、やめろ、ヴィンセント……」

 ワナワナと震える声が続ける。

「なんで……どうして、ヴィンセント……」

「……言ったはずだ。私をこの世に引きずり出したのはおまえだ」

 クラウドを見ぬままに答えた。

 長刀を掴んだままでは、そんな余裕はなかったのだ。

「ヴィンセント・ヴァレンタイン。……私がわずかに力を込めれば、貴様の指四つ……はじけ飛ぶぞ」

 セフィロスが低くつぶやいた。心胆寒からしめる冷ややかな声音だ。

「……やってみろ」

 恐れを感じる前にそう応じる。

 そうだ。

 そもそも、私はこの子に逢う前は死んだも同然……いや、『死んで』いたのだ。

 怖いものなど、何一つない。

 

「ヴィンセント……! 何してんだよ、アンタはッ! セ、セフィの言うとおり、ヴィンセントにはそんな理由ないじゃないかッ! か、身体張って俺を守る理由なんて……何も……!」

「……黙っていなさい、クラウド」

「だって……一緒に来てくれたのだって、俺が無理に引っ張ってきて……! 俺のせいでヴィンセントが怪我すんのは嫌だッ! もう絶対に嫌だッ!」

 箍が外れたように、クラウドはぼろぼろと涙をこぼした。

 

 

 

 

 

 

「……ほう、なるほど」

 セフィロスが冷たく言った。

「ヴィンセント・ヴァレンタイン。……貴様がクラウドの『次』、か」

「やめろよ、セフィロス! 違う……ヴィンセントはそんなんじゃ……!」

 叫ぶクラウドを、一瞥もせず、彼は続けた。

「この子供……いや、もういいかげんにコレも子供ではないだろうが……この卑しい男はな、ヴィンセント。脆弱で……無知で……醜隗な輩だ」

 作られた表情に合わせて、わざとらしく柳眉が動いた。

「同輩の死を忘れ、故郷の村での出来事さえも曖昧だ。……現実から常に逃げ続けた結果がコレだ。そう……この者は、認めたくない、恐ろしいと感じれば、すぐさま背を向ける。おのれを甘えさせてくれる存在を探し求める。そして依存するのだ」

 憎悪のこもった口調でそう言い放った。

「今だとて、この私を説得……? まるきり現実の見えていない愚者の行いだ。その下らぬ行動が、他者を傷つけることになる。……このように、な」

 

 ザンッ!

 

 と日本刀が閃いた。銘はマサムネ……正宗というらしい。

 指を切るよう上段に振り払われたわけではない。峰のまま、私の手を打ち落とし、反対側の腕を狙われた。手甲をしていないそちら側は、銃を操る利き手と読んだのだろう。

 今度は傷をつけるためではない。

 腕ごと持って行く気迫であった。

「くっ……!」

 切っ先が二の腕をかすめた。

 痛みはないが、むしろよくおのれの身体能力で避けられたなと感じた。

 

 ガゥンガゥン!

 

 小銃を両手にひとつずつ持ち、セフィロスと間合いをとる。

 彼を狙わず、あくまでも距離をとるためだった。

 

 セフィロスの物言いを黙って聞いている間に、どんどん脳裏が冷えていくのを感じていた。

 この感覚……神経細胞がそそけたってゆく。

 どす黒い熱の固まりが、身のうちに息づき、それは冷たく冴えてゆく精神とは別に、私の肉体を支配しつつあった。